乙女心は複雑（王賁） ページ45
※玉鳳隊隊員、恋人同士設定です
何故、一体何故なのだ。
皆目見当がつかぬ。
何故、俺を拒むのか。
Aはいつもフラッと俺の天幕に転がり込んできて共に夜を過ごす。
もちろん毎夜とはいかぬが、開いても二日ほどだ。
同じ空間で各々やるべき事をやり、俺が先に寝台に入った時はアイツが来るまで起きている。
その後、猫のように甘えて体を擦り寄せてくる時は俺も男だ。
初めの頃は忍耐強く自制したものだが、二人では少々手狭な寝台に愛しむ者を前にしてはなかなか欲には勝てぬ。
そんな俺を見てわざとか？と思うほどアイツも求めるように情欲的な顔をするのがけしからん。
故にタガが外れて一度でも抱いてしまえば己の自制心など見事に崩れ、欲に溺れてAを抱く。
一方でAが先に寝台に入った時はとっとと寝てしまうが。
そのような時には寝顔に目を向けると不思議と心安らぎ満ち足りる。
女など枷にしかならぬと思っていた俺が今やAの存在が一部となるとはな。
だがAが来なくなって今日で十日はゆうに超えているぞ。
俺は痺れを切らし、今夜は天幕に来いと言った。
しかしいつもと同じように過ごしたと思ったら、頃合いになると自分の寝床に帰って行った。
これが何度か続き、最近は何か用向きがあるのかと聞けばはぐらかして逃げるように去る。
今夜こそはその根拠を聞き出す。
俺は槍の手入れを仕上げ、一人で明日の作戦を考えているAへ声をかけた。
「そろそろ休む、お前も寝台へ来い。」
『え、そんな率直な言い方ある？』
確かに雰囲気がまるでない言い方ではあったが、Aは渋々といった表情でモゾモゾと潜り込んできた。
『あ〜賁はあったかいなぁ…おやすみなさーい。』
「おい待て。この状況で放っておくものか。」
目を瞑りさっさと寝ようとしたAの両手首を掴んで上から覆い被さり、その体を組み敷いた。
珍しいことに少々その顔が強張ったように見える。
しかしこのまま無理にコトを進めるのは気が引けるというものだ。
Aの口から理由を聞き出すまでは、と思っていた矢先。
『ねぇ〜賁、寒いよ。もっとぎゅってして。』
…っ！
俺は馬鹿か。
そうねだるように甘い声で言われれば、Aへ手を回し抱き寄せてしまう。
案の定、ホクホクとした顔で眠りにつく。
今夜も失敗に終わった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 97人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ずーみん(プロフ) - 春雷さん» 素敵な感想を頂きましてとても嬉しいかぎりです。今書いているものが完成したらまた蒙恬に着手しようと思います！たくさん読んでくださってありがとうございました！ (2021年6月16日 20時) (
レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
春雷(プロフ) - ほんと良いです！切なくなったり、色々と思ってしまいました。どの作品も文章や表現が綺麗で、ファンになりました！これからも楽しみにしています！蒙恬のお話を特にお待ちしております (2021年6月16日 14時) (レス) id: 50c46308fb (このIDを非表示/違反報告)
とも - 毎日楽しみに読ませてもらってます！街で出会ってから一目惚れされて仲良くなって告白されるまでを書いていただきたいです！多いですが王賁と蒙恬と信と政をお願いします！！ (2020年11月27日 7時) (レス) id: 382e67ae5e (このIDを非表示/違反報告)
ずーみん(プロフ) - 凛さん» 凛さん≫お待たせ致しました。ページが一杯になってしまったので、短編集続編の方に載せました。少々サッパリした展開で上手く書けたか分かりかねますが、書いてて楽しかったです、リクエストありがとうございました！ (2020年11月27日 1時) (レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
凛 - 有難うございます！楽しみにしています！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 61c2aa8520 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：プラリネ | 作成日時：2020年9月6日 2時
