王賁の一目惚れ（リクエスト） ページ19
戦に出ていない俺が普段やることと言ったらほぼ決まっている。
世の情勢について学ぶか、戦術を考えるか、槍の修練が主だ。
最近では気分を一新する為に王家私有地の山林へ出向き鍛錬に励むことも多くなった。
静かな山林は精神を鍛えるにも適しており、光の明暗や音、におい、外気の感触全ての神経が研ぎ澄まされる。
この体に残った余韻に浸る心地よさを知り、近頃では馬を使わずゆっくりと歩いて帰るのも悪くないと思い至った。
そんな日のいつもの風景にいつもの道。
店が立ち並ぶ通りでは普段から客の多い茶屋が一軒ある。
茶屋は他にもあるが何故かここの一軒だけが周りとは違う賑わいだ。
人の心理とは不思議なもので、今すぐ落ち着ける茶屋よりも混雑しているほうへ興味が湧くということはよくある話だ。
「少々ここで休む。」
今まで素通りしていたこの茶屋にふと目を向けた俺も例外には漏れず。
ただの気まぐれにしては珍しい行動に、共に来ていた番陽は承諾しながらも戸惑った。
『ようこそおいで下さいました。初めて…でいらっしゃいますね。』
「ああ。」
店の者は柔和な顔付きで案内し、番陽はこの店で一番上等な茶を二つ頼んだ。
そのうち温かい茶が運ばれ口にしながら一息つく。
何故この店に客が集うのかまだ分からぬが、愛想の良い店員が一際目立っていることが分かる。
先程の案内した女だ。
俺に初めてかと言ったように、この不特定多数がやってくる店の一人ひとりの顔を覚えているのか。
俺は、張り付いた笑顔を作り男に媚びへつらう甘ったるい声を出す女は好きではない。
見合い相手や街で話しかけてくる者はだいたい皆同じだ。
しかし店の女は客に話しかけられては曇りのない微笑みで談笑に付き合っており、聞こえる声は涼やかで澄んだ水のような淀みなき声だった。
そして不思議と目で追い、耳を傾けさせる佇まいを放つ。
「…さま、賁様、如何されましたか？」
「…！何でもない。」
番陽は俺に話しかけていたようだが全く耳に入ってこなかった。
疲労が溜まっているのかと思ったがそこまでの感覚もない。
時にすれば小半時ほど、気付かぬうちにずっと視界に入れていたのか。
…女に現を抜かすなど情けのないことだ。
これは屋敷に戻り次第、鍛錬のし直しだな。
俺は残っていた茶を一気に飲み干した。
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ずーみん(プロフ) - いちご飴さん» 慶舎と白麗、大変遅くなりましてごめんなさい！しかも白麗に至っては激甘というわけでもなく…ちょっと心残りなのでリベンジします。リクエストありがとうございました (2021年8月6日 1時) (
レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
天空うさぎ - ずーみんさん» そ、そんなコメントしてるだけなのに私はお礼を言ってもらっていいんですかね(///ω///)♪ (2021年7月23日 10時) (レス) id: f93ac5a74a (このIDを非表示/違反報告)
ずーみん(プロフ) - 天空うさぎさん» いつも読んでくださってありがとうございます！毎度励みになっていますー！ (2021年7月22日 20時) (レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
天空うさぎ - ずーみんさん» 慶舎も読ませていただきました！漫画とは少し違った世界観が素敵な作品でした！もう大好k((殴 (2021年7月22日 12時) (レス) id: f93ac5a74a (このIDを非表示/違反報告)
天空うさぎ - ずーみんさん» ↑名前を変えました。元堕紀です。とても良かったです！やはりずーみん様の作品にははずれがないな……(≧▽≦) (2021年7月11日 11時) (レス) id: f93ac5a74a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：プラリネ | 作成日時：2020年11月26日 23時
