王賁の一目惚れ�� ページ20
『もうお帰りですか？またいらして下さいね。』
茶杯を片付けながら、他の客に向けた時と同じ顔で接する。
少々距離があった時は目で追いかけていたにもかかわらず、いざ近くに来るとなかなか直視出来ぬものだ。
しかし立ち上がり最後に一度、視線を向ければ小首を傾げ更に笑みを深めた。
その瞬間、この女によって茶屋が繁盛していると理解出来た。
いるだけで空気が朗らかになり自分に愛想を振り向けられれば悪い気はしない。
加えて整った顔立ち、それが他の男の客の目当てでもあるのだろう。
たった小半時と少しだが、この女に話しかけるのは男ばかりだった。
そして実際に目を追っていた俺も同じこと。
一族総本家の後継者ともあろう者が、結局はこの烏合の衆の中の一人だという事実に気が滅入った。
「賁様、今日は寄って行かんのですか？」
「あぁ。」
また来てくれと言われておいそれと今日も行く奴があるか。
しかも全ての客に言っているであろう言葉を真に受けるなど。
茶屋を尻目に見れば、相変わらずの賑わいぶりであった。
すると例の女と目が合い、控えめに手を振り目配せしてくる。
誰もが見ている前で、男が手など振れるものか。
俺は応えることなくやり過ごした。
あまり見るものではないな。
しかし一人でいると顔がチラつき俺は心底面白くない。
己の自制とはここまで脆かったのかと突きつけられているようだ。
そこで何日か茶屋の前を素通りする日を作る。
明日には消えるだろう、忘れるだろうと思い毎日床に就くが迎えた朝は気だるく鬱屈している気分だ。
俺はまんまと乗せられているのか。
次の日、久方ぶりに山林で槍を振るったその帰り道。
例の茶屋の前に来た。
「番陽、今日は休む。」
「はっ！」
なんて事はない、たかが茶を飲むだけだ。
茶を飲み一服し帰る、それだけのこと。
…では済まなかった。
「あれだけ毎度、店の前を通るたびに反応するな。迷惑だ。」
『でも根負けして来て下さったのですね。嬉しいです。』
店に入るとすかさず近付いてきた例の女に俺は話しかけていた。
こちらへどうぞ、と以前より喜びを浮かべて案内する顔を見れば内心落ち着かぬ。
だが早々に帰る気にもならぬ。
「娘。この方はおいそれと話しかけて良い方ではない。」
「…構わん、番陽。」
『存じていますよ。王賁様、ですよね。
私はAと申します。ではごゆっくり…』
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ずーみん(プロフ) - いちご飴さん» 慶舎と白麗、大変遅くなりましてごめんなさい！しかも白麗に至っては激甘というわけでもなく…ちょっと心残りなのでリベンジします。リクエストありがとうございました (2021年8月6日 1時) (
レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
天空うさぎ - ずーみんさん» そ、そんなコメントしてるだけなのに私はお礼を言ってもらっていいんですかね(///ω///)♪ (2021年7月23日 10時) (レス) id: f93ac5a74a (このIDを非表示/違反報告)
ずーみん(プロフ) - 天空うさぎさん» いつも読んでくださってありがとうございます！毎度励みになっていますー！ (2021年7月22日 20時) (レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
天空うさぎ - ずーみんさん» 慶舎も読ませていただきました！漫画とは少し違った世界観が素敵な作品でした！もう大好k((殴 (2021年7月22日 12時) (レス) id: f93ac5a74a (このIDを非表示/違反報告)
天空うさぎ - ずーみんさん» ↑名前を変えました。元堕紀です。とても良かったです！やはりずーみん様の作品にははずれがないな……(≧▽≦) (2021年7月11日 11時) (レス) id: f93ac5a74a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：プラリネ | 作成日時：2020年11月26日 23時
