3話 ページ5
愛海「玻璃、ただいま〜、、、」
私が夕食の準備を済ませたちょうどその時。
廊下が軋む音と共に愛海が帰ってきた。
玻璃「おかえり、愛海。」
補習終わりで二人とも疲れ切っているようだ。
グリムに至っては、ただいまを言う前に
ツナ缶を開けてさっさと食べ始めている。
玻璃「グリム、いただきますって言った？」
そう尋ねるとギクリと肩をふるわせ
いただきますなんだゾ、と小さく呟いた。
そんな様子に思わず笑みを零しつつ
愛海と自分の分のご飯をテーブルに用意した。
愛海「わ〜！今日のご飯も美味しそう！
いっただきま〜す！」
弾けんばかりの笑顔でご飯を食べ進める愛海。
口に合ったらしく、あっという間に食べあげ
おかわりまでしたくらいだ。
食べ終わってしばらく談笑していた時、ふと招待状を
貰ったことを思い出した。
玻璃「そう言えば、リドル先輩から、これ。」
封筒を手渡すと、愛海は嬉しそうにそれを開ける。
中に入っていたのは、可愛らしい薔薇をあつらえた
ペンダントと、招待の旨が書かれた手紙。
玻璃「良かったね、愛海。」
そう言って微笑むと、戸惑ったように
こちらを見つめる愛海。
愛海「これって、、、？」
玻璃「誕生日プレゼントじゃない？
パーティーのお誘いもあったんでしょ？」
そう伝えると、困ったように眉を下げる愛海。
大方、私に気遣っているつもりなのだろう。
玻璃「折角だし、遠慮せずに楽しんできたら？」
愛海は私の言葉に少し唸ると、パッと顔を上げた。
愛海「それならさ、玻璃も行こうよ！」
突拍子のない彼女の言葉に、少し戸惑う。
どう考えてもこの招待状は愛海への物で
私はお呼びでないからだ。
玻璃「その日はバイトがあるから無理かな、ごめん。」
適当な嘘をついて愛海の誘いを断ると不本意そうに
彼女は肩を落とした。
愛海「え〜、、、でも、玻璃だって、、、。」
彼女がその言葉の続きを言う前に私は小さく首を振る。
玻璃「お金が無いと生きていけない。
それは愛海も知っているでしょ。」
そう言えば、諦めもついたのか頷く愛海。
きっと一時間もすれば私の事なんて忘れて
浮かれながらパーティーの話をするのだろう。
それでいいんだ。
じわじわと濁る心は、誰も気が付かなくていい。
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作者名：楪 | 作成日時：2022年4月30日 13時
