きっと、ヌナは涙を拭う。

120 他の幸せがあったとしても ページ20

．




分かってる。



分かってるの、私。









"無理に言わなくてもいいよ"


"俺はヌナが泣いてないかだけが心配なの"








そんな優しい真心の裏に隠されたテヒョンの本当の気持ち。









「私ずるくて、ほんと最低なの…」



TH「……そんなこと思ってないから。泣かないで」







長い指が優しく私の目の縁をなぞる。







「…分かってた。テヒョンはそうやって言ってくれたけど、ほんとは不安だったことなんて、私全部分かってたのに…」









不安にならないはずがない。







テヒョンとの約束を断ってまで、ずっと好きだった人と話をしたいって言った私。



挙げ句の果てに、"安心していいよ"なんてテヒョンに期待させるようなことを言った。







なのにグクと何を話したのかをテヒョンに報告せず、ただただ彼の前で涙だけ流して。




こんなのグクと何かあったって言ってるようなもので。







"安心していいよ"なんて口だけで、それを結局態度や形として示さないままうやむやにして不安を煽った。









TH「ヌナ、顔上げて」





自分の浅ましさに涙が止まらず俯いている私の頭上に、あまりにも優しい声が降る。





それに導かれるようにゆっくりと顔をあげると。









TH「…泣かないでって」






しょうがないなぁ、とでも言わんばかりの優しい笑みを浮かべながら、私の頬を大きな手で包んで涙を拭うテヒョン。







TH「ごめんね。俺子どもだね」


「…どこが。子どもなのは私でしょ」



TH「無理に言わなくてもいいよ、なんて言ったけど、ほんとはジョングクと何があったのかって気になって仕方なかった」



「うん……」



TH「…すごい不安だった」






ぽつりとゆっくり紡がれた言葉から、テヒョンのその不安がまた痛いぐらいに伝わってきて涙が溢れる。








TH「でもそんなことよりもヌナが泣いてることの方が辛かった」







そう言ってまた優しく私の涙を拭うテヒョン。






もう私は苦しくて、苦しくて、死んでしまいそうで。









「…っ…テヒョンはどうしてそんなに優しいの？

どうして、こんなふらふらしてる最低な私に優しくしてくれるの…？」







私なんかのせいで不安を抱いたり、胸を痛めなくても、絶対テヒョンにはいるでしょう？








テヒョンのことだけを心から大事にしてくれる人。






テヒョンを笑顔に、幸せにしてくれる子が。









．

121 鈍感なんて→←119 分からないふりはやめて

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す