覚めた夢と ページ43
見慣れた長髪。
聞くのはタブーだと言われたあの服装。
背中からにじみ出る不機嫌オーラ。
「ヴァニラさん！」
黒くてよくわからない空間の中、奏人は彼を追いかけた。
いつもなら立ち止まってくれるのに、今日は何故か無視されているようだ。
以前DIOに怒られたらしい時にそうなっていたので、多分今もそういう状態なのだろう。
あの時はなんとか粘って話を聞かせてもらった覚えがある。
その時に普段聞けない愚痴も聞けて、奏人自身は少し距離が縮まる瞬間だと思っていた。
「ヴァニラさん、聞いてます？」
親の後ろについて歩く雛のように、何も言わないヴァニラの後ろを奏人はひょこひょこと歩く。
おどけたようなその歩き方は「目障りだ」と昔ヴァニラに指摘されたことがあるが、それが初めて彼から奏人に対して向けられた言葉であった為、彼の前ではついその歩き方をしてしまうのだ。
かまって欲しい。
気を引きたい。
しかしその思いは叶わず、相変わらず無言のままヴァニラは前を歩いている。
「ねぇ、ヴァニラさん。どこに向かってるの」
「僕達今、どこにいるの」
「ねぇ」
「ねぇったら！」
奏人は必死に叫ぶ。
それでも彼は何も応えなかった。
少しだけ怖くなって無言になるも、奏人はついて行くのをやめなかった。
どれだけ歩いただろうか。
黒い空間の中でも更に黒く見える扉が目の前に現れた。
ヴァニラが立ち止まったので、奏人もそのまま立ち止まる。
扉と言うよりも門に近いそれは少し開かれており、その向こうから闇がこちらを覗き込んでいた。
「ヴァニ･･････」
「奏人」
ようやく聞けた声に奏人は心底ホッとする。
しかし、いつもは「百鬼」と呼ぶ彼が名前を呼んだことに違和感を覚え、奏人は姿勢を正した。
「ついて来るな」
「･･････なんで？」
相変わらず顔をこちらに向けないままのヴァニラに、恐る恐る問いかける。
しかし答えは返されないまま、ヴァニラに押された奏人はさっきまであったはずの地面に落ちていく。
「ヴァニラさんッ！？」
奏人は落ちていきながらも、あの扉をくぐる彼の姿を見た。
彼の形は徐々に崩れ、塵と化していく。
その様がいつかの女の人と重なった気がして、浮遊感の中、奏人はまたあの恐怖を思い出していた。
(置いて、いかないで･･････いくなら、僕も一緒に･･････)
「ヴァニラさッ･･････！」
目を覚ました。
ここは病院のベッドの上だ。
残酷な、現実の世界だ。
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アーディ(プロフ) - くろねこ1227さん» まだ夢主ちゃんもふわっふわな時期でしたからねぇ……2人のすれ違いコントは結構楽しく書いてました。お気に召したなら何よりです！ (1月4日 1時) (
レス) @page15 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
くろねこ1227(プロフ) - 承太郎を心から頼りにしてる夢主ちゃんのノートのなんやかんやにフフッてなった。ガッツポーズする承太郎可愛いな！２人の固い絆を感じるとても好きなシーンです。 (1月4日 0時) (レス) @page9 id: 929310bb43 (このIDを非表示/違反報告)
奇妙な前髪(アーディ)(プロフ) - アオイさん» 一気ですか！読破お疲れ様です！途中でかなり路線変更したので違和感がなかったと言っていただけてありがたい限りです･･･！またしばらく間は開きそうですが、完全停止だけはしないつもりです。応援ありがとうございます。頑張りますね！ (2018年6月21日 6時) (レス) id: 48ec130d60 (このIDを非表示/違反報告)
アオイ - 一から一気に読みました！物語が違和感なく進んでいることや全員生存ルートが無理な形で入っていないところが素晴らしいと思います。ゆっくりで良いので更新頑張ってください!応援しています。 (2018年6月20日 16時) (レス) id: faa73ce9b0 (このIDを非表示/違反報告)
奇妙な前髪(アーディ)(プロフ) - まさか、その、えっと･･････そんな方がいらっしゃるとは思ってなくて･････たまに更新はしますね。頑張ります。ありがとうございます･････ (2018年4月29日 11時) (レス) id: 48ec130d60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奇妙な前髪 | 作成日時：2018年2月20日 20時
