邂逅 ページ36
普通の人間ならこんな時、その場から離れ、逃げようとするだろう。
しかし奏人は違った。
あえてぶつかりに行ったのだ。
見たということがバレれば自分も消される。
そう確信していた。
「！」
「わっ！」
できる限り自然に本を取り落とし、閉じてしまった本を慌てて開く。
そして目当てのページを見つけたというように安堵の息をつくと、栞を挟んで本を閉じた。
「あっ、その、ごめんなさい･･････僕、本に夢中になってて･･････」
男の視線を受け、奏人は内心汗をかいている。
本を読みながら歩くのは良くないことだと思っていたし、何故女の人が消えたのかわかりかけていたからだ。
「こちらも不注意だった･･････怪我は？」
「大丈夫です。本はちゃんと家に帰ってから読みます」
「･･････そうしなさい」
あまりにも冷たい視線に気付かないフリをしながら、奏人は何事もなかったようにその場を去ろうとする。
自身につきまとうそれにも人を消してしまえる力があるのだと思うと怖かったが、それを従えているように見える男の方が怖かった。
「君」
「･･････はい」
奏人は立ち止まった。
しかし振り返ることはしなかった。
いや、できなかったと言うべきか。
縫い止められたように動かない足。
チラリと足下を伺い見れば、男のものではない手が両足を掴んでいるのが見えた。
後ろで小さく、不気味に笑う声が聞こえる。
「さっきのことだが･･････何か、見たかね？」
バレて、いるのか？
瞳が揺れる。
しかし他には動揺している素振りは見せず、極めて普通を装った。
「何かって、なんですか？」
「いや、なんでもない。そうか、フフ･･････君は何も見なかった･･････」
男が近付いてくるのがわかる。
僕は、消されるのか･･････？
思わず固く閉じた目が、肩に手を置かれたことで大きく見開かれる。
「･･････いいね？」
男は離れていく。
自由になった足が今にも地面にくっつきそうだったがなんとか堪えた。
「ところで」
まだ何かあるのか。
奏人は半ば放心状態で男の言葉を待つ。
「こんな暗い中で本を読むと目が悪くなる。家ではちゃんと電気をつけるように」
男はようやくどこかに行った。
奏人はしばらくその場で突っ立っていたが、ふと思い出したように本を開く。
なるほど、暗くて読めやしない。
彼はそのまま家に帰ると、小学六年生になるまで家に引きこもった。
それについて知るために。
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アーディ(プロフ) - くろねこ1227さん» まだ夢主ちゃんもふわっふわな時期でしたからねぇ……2人のすれ違いコントは結構楽しく書いてました。お気に召したなら何よりです！ (1月4日 1時) (
レス) @page15 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
くろねこ1227(プロフ) - 承太郎を心から頼りにしてる夢主ちゃんのノートのなんやかんやにフフッてなった。ガッツポーズする承太郎可愛いな！２人の固い絆を感じるとても好きなシーンです。 (1月4日 0時) (レス) @page9 id: 929310bb43 (このIDを非表示/違反報告)
奇妙な前髪(アーディ)(プロフ) - アオイさん» 一気ですか！読破お疲れ様です！途中でかなり路線変更したので違和感がなかったと言っていただけてありがたい限りです･･･！またしばらく間は開きそうですが、完全停止だけはしないつもりです。応援ありがとうございます。頑張りますね！ (2018年6月21日 6時) (レス) id: 48ec130d60 (このIDを非表示/違反報告)
アオイ - 一から一気に読みました！物語が違和感なく進んでいることや全員生存ルートが無理な形で入っていないところが素晴らしいと思います。ゆっくりで良いので更新頑張ってください!応援しています。 (2018年6月20日 16時) (レス) id: faa73ce9b0 (このIDを非表示/違反報告)
奇妙な前髪(アーディ)(プロフ) - まさか、その、えっと･･････そんな方がいらっしゃるとは思ってなくて･････たまに更新はしますね。頑張ります。ありがとうございます･････ (2018年4月29日 11時) (レス) id: 48ec130d60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奇妙な前髪 | 作成日時：2018年2月20日 20時
