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しばらく泣いて、落ち着いた頃。
彼から気分転換に少しだけ寄らないかと言われて、カラオケ店に入った。
「先に部屋に行ってて」
喉はカラカラで目は少し腫れてるし、醜態を晒してしまっているけど、どうでもよかった。
部屋で待っていると、私の分のドリンクも持った彼がドアを開けて入ってくる。
「少し落ち着きましたか?」
「はい、」
会話を遮るように、スマホのバイブ音が鳴り響く。
「ああ、気にしないでください」
そう言って、笑顔で私の方に向き直る。
「歌ってもいいですか?」
「うん、」
K-POPから洋楽、J-POPまで色々なものを歌ってくれた。たまに一緒に歌って〜といわれて、デュエットしたり。そうこうしている内に、負の感情が楽な感情へと切り替わっていく。
「ふふ、」
「?」
「ありがとう、」
お互い笑い合って、見つめあう。
「A、」
「最後に聴いてくれる?」
そう言って歌ってくれたのは、今回のソロ曲。
優しくて透き通る声が、心地良い。
歌い終わり、深くお辞儀をするグク。
私は、パチパチと拍手を送った。
「ふふ、独占コンサートみたいだね」
「うん」
「...」
「グク、あのね」
携帯の振動する音が鳴り響く。
画面を確認した話し相手は、時間をみて告げる。
「そろそろ行かなきゃ」
「うん、」
その日は途中まで送ってもらい、幸せな時間は幕を閉じた。
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作者名:あぽ | 作成日時:2023年7月7日 8時