悲劇姫【わたしの幸せな結婚】 (ページ2)

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たね　１ページ2

この国には、古来より異形が出る。

それは、人の形をしたもの、動物の形をしたもの、形さえ言い表すことのできないもの。様々な外見を持つそれらは、鬼や妖とも呼ばれ、人に害をなした。

人に害を与えないためにもそれを討伐するのは、代々超能力的な力を持つものが生まれる特殊な家の異能力者たちだ。

そのものたちしか異形を討伐することができない。そのためそのもたちは、帝から信頼を得て、長く重宝されていた。

その中でも、特に優遇されていたのが橘(たちばな)家である。他の家とは比べ物にはならない異能力と他の家にはない力を彼らは持っていたからである。

しかし、それは永遠に続くものではなかった。

橘家の力に恐れた帝が、暗黙に橘家を一夜にして潰したのである。

一つの世帯を除いて。

橘家の生き残りと言われる夫婦には、代々続いている異能力も力も持たない、ただの人であった。
帝も一度は刺客を送ろうとしたがそのことを知って、刺客たちを撤廃させた。

無力のものは殺したくないという思いの裏腹に国民の中では、国家が潰したのではないかと考えるものがいたからである。

橘家は周りの人々から強い信頼を得ていた。
それは、精神面でも力としても....

強い橘家がそこら辺の異能力者に負けるはずがないと噂する人もいるのだ。

さておき、立場もモノも家も何もかも失った一世帯、夫婦は最初は絶望したもののゆっくりと立ち直り、周りの人の力を借りながら消え去った家の跡地に大きくも、小さくもない家を建てた。そして、そこで小さな病院を始めた。

旦那の家系は治癒能力があった。若い頃は国に尽くし年おいたら国民のために尽くしていた。旦那にはその力がないため生き残るためにも自力で医学について学んだのだ。

病院としての仕事が安定してきた頃、奥方が孕んだ。経営も落ち着き、年齢的にも夫婦共に23歳と子供をこさえていてもおかしくはない年なのである。

旦那は仕事を少し減らした。
特に身分の高いものの診療は拒んだ。他の医者に当たってくれと。

だが、一家だけは違った。

「いい感じですね。
赤ちゃんも元気ですよ」

芙由「そうですか」

「膨らみ方からして男の子だね。
きっと芙由様に似て綺麗な美男子になるでしょう」

正清「司くん、僕には似ないのかい？」

「んーもし正清様に似るんだったら葉月様みたいによく動くはずだからね」

正清「えぇ！」

ただ一つ、久堂家だけである。