悲劇姫【わたしの幸せな結婚】 (ページ3)

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たね　２ページ3

理由は、奥方にあった。
久堂家の芙由とは古き友人。いわゆる幼馴染の立ち位置にいたのだ。

それを知った正清が2人目である子供は旦那の病院で産むことにしたのである。
旦那としても、奥方が同じ状況にいる友がいた方が安心するだろうとなったのである。

葉月「ねーセンセのあかちゃんげんき？」

「あぁ元気だよ。
葉月お嬢様にお願いがあるんだけど聞いてくれるかい？」

葉月「なあに」

「先生の赤ちゃんが産まれたら葉月お嬢様にお姉ちゃんになって欲しいんだ。」

正清「司くん...」

二つの夫婦は似て似つかなかった。
それは、生まれた時から決まっていた運命であったのかもそれない。

そのことについて久堂家も薄々気がついていた。

芙由「葉月、できますよね」

葉月「はい！」

「ははっありがとう」

それから五ヶ月くらい経った頃、久堂家の一室に産声が上がった。母の中にいた小さな命はしっかりと外に出てきたのである。

その一ヶ月後に橘家でも産声が上がった。しかし、それとともに男の、司の、旦那の泣き声も響いた。

奥方は子を孕んでから、変なものが見えるだの死んだはずの人が見えるだの言い出した。旦那は精一杯、支えた。

奥方はお腹にいるのこの性別がわかったときからいろんなものを買い始めた。それを木箱に手紙とともに詰めて。その数、20個。

ある時、旦那は奥方の日記を見つけた。そこには奥方の、自分の妻の知らない事実が事細かく記してあった。

知るはずのない橘家のことについても....

奥方は死んだ。
残ったのは愛しい妻との子と妻が死んだという事実だけだった。

旦那は、妻を失って数日経った頃、自分たちも妻の元へと行こうとした。
泣きやまぬ子を抱いて川へ飛び込もうとした。

橋に足をかけた時、後ろから声がした。

「司様。
おやめください」

「静世さん？
どうしてッ...僕を」

「そのことについてはごめんなさい。
あのね、私あなたと結婚できて幸せよ。あなたとの子供を産むことができて幸せ」

「だからって！」

「娘が、Aが4つになるまではAを見守ってあげて」

「僕は君なしじゃ生きていけないんだ。
お願いだ。僕も連れて行って」

司の目の前に現れた愛しき妻、静世は困ったように笑った。
いつもの彼なら今の静世の気持ちもわかっただろうに。
いつもの彼なら