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「落ち着いた？」
頭を撫ででくれていた右手と、しっかりめに寄せてくれていた左手が少し緩んだ。
「ごめん、急に泣いて、びっくりしたやろ？」
「ほんまびびったわ、なに、どうしたん？」
「なんと言うか、その、なんか恥ずかしいんやけどさぁ」
さっき頭にあった手は私の両手を優しく握って温めてくれている。その手を見つめながら自分の気持ちを直接言おうか言わまいか、
少し悩んだ。
でも祥生が私の次の言葉を待ってくれている事に気がついて、そのまま目を合わせずに話し出した。
「周りになんて言われても祥生とおるのが楽しいし、祥生とずっと一緒におりたいのに、いつか一緒にいれんくなるのが悲しいなぁって思ったら、泣いてた。
友達なのにさぁ、めっちゃ我儘な奴だなって申し訳なくなっちゃった」
さっき思った素直な気持ち。つらつらと言葉は出てきたけど、
やっぱり話しながら祥生の顔を見る事が出来なかった。
話し終わってから少しの間、頭上からフッと笑い声が聞こえてきた。
顔を上げると、祥生が肩を震わせて笑っていた。
ひとしきり笑った祥生を見てポカンとしていると、彼は続けた。
「Aなんか勘違いしてへん？」
「え？」
「俺がこんなんするのはAだけやで」
「変なやつから助けるのも、放課後一緒にお出かけするのも、こうやってダラダラ過ごすのも、全部Aとしかせーへんで」
「まって、それって」
「やっと気ぃついた？」
急に心臓がうるさい。柔らかいのに芯のある目と目線が合う。
恥ずかしくなって咄嗟に目線を反らすと、それを許すまいと祥生の両手が私の両頬を優しく包んだ。
「俺は幼馴染でただの友達だからそばに居ったんちゃうで。Aが俺にとって大事な友達で、たった1人世界で1番大切にしたい女の子だからやで。
だからさ、これからも一緒におってよ。」
さっき引っ込めたはずの涙が目尻を伝う感覚。
思いもよらない展開に驚きと嬉しさと感情全部がごちゃ混ぜになって、結局泣くことしか出来なかった。
「もう泣かんでよ〜」って困り顔で服の袖を引っ張って涙を拭いてくれる祥生がひどく愛おしく見える。
「これからもしょせと一緒でいいの？」
「当たり前、ずっとおるよ」
これからも、祥生は友達で世界で1番大事な人。
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作者名：シン | 作成日時：2022年4月15日 23時
