それでも、君と一緒に (ページ14)

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結局昨日は私のお母さんの作った晩御飯まできっちり食べて帰った翔也。
翔也にとってご飯は元気が出る魔法らしい。

「やっぱAの作るお菓子が一番美味しい。明日も待ってる！」

昨日の帰り際に放った一言だった。
いつもちゃんと感謝は伝えてくるけど、なんか昨日のは一段と嬉しかった。

―――――

今日は日直だったせいで先生にノート運びを頼まれてしまった。
重たいのになぁとか、文句は言えず。
運んでる最中たまたま通りかかった空き教室から、楽しそうな女の子の声が聞こえてきた。

「そういえば由那、昨日木全君から告られたんだって？」

まさかそんな会話が聞こえると思ってなくて、持っていたノートのバランスを崩しかけた。
なんとなく、その場から早く離れた方が良いって私の勘が働いてたんだけど、なんだか体は動いてくれなかった。

「あぁ～木全君ねぇ、そうだよ」
「なんで断ったの？由那彼氏欲しがってたじゃん」
「えー、木全君はないでしょ、なんか地味そうだし。パッとしないし」

わかる～って甲高い笑い声が頭にガンガン響いた。
ほおら言った。

ほんとは、お前らに翔也の何がわかるんだって出ていくのがカッコイイんだろうけど、私にその余裕と勇気はなくて。
静かに、ばれないように、その場から離れた。

ぐるぐる、ぐるぐる、嫌な感情で頭を飲み込まれそうになる。
純粋に彼女を好きだった翔也の気持ちはああやって、女の子の間で笑って消費されていた。
なんだかそれが許せなくて、悔しくて。

翔也はちょっと不思議、いやだいぶ不思議ちゃんだけど、芯が強くて一回やるって決めたらちゃんとやるし、
ニコニコ子供みたいにご飯食べてると思ったら、人の事よく見てて、ちょっとした変化にもちゃんと気が付くし。
前髪でちょっと隠れてるけど、透明感のある綺麗な顔してるし。
こんな素敵な人間の魅力に気が付けないなんて、バカだなぁ。

落ちた気持ちの中教室に帰ると、クラスの友達と笑顔の翔也が視界に入った。
その顔見たら、あんな会話直接翔也が聞かなくて良かったってちょっと安心した。

だから恋愛って、面倒なんだよ。