それでも、君と一緒に (ページ11)

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あれから。
彼をカッコつけて送り出してから季節を２回繰り返した。

少し前まで目の前にいて当たり前だった人は液晶越しにしか見られない場所にいる。
葛藤はあれど「いってきな、頑張れ」と送り出した身なのに、顔を見るたびつらくて苦しい。
でも彼を私は見続けれなければいけない。
彼の夢が叶うまでは絶対に目を離しちゃいけないと自分に大きな枷を勝手に付けている。

よく言えば、世界一大切な人の夢を応援してる女の子。
悪くいえば元カレが忘れられない諦めの悪い元カノ。
自分の行いを美談にすることも出来れば、ただ彼を自分の人生に縛り付ける事が怖かった臆病者だとも捉えられる。

でも結局手枷足枷をつけたまま、私は拓実への気持ちには南京錠をかけた。
そんな風にして現実世界を生きて、時間というのは何食わぬ顔で過ぎていく。

私もついに社会に呑まれる１人の人間になった。

自由で自分の好きな事が出来て充実した大人

そんな学生時代の理想は儚く散り、ただ目標もなく、日々仕事をこなして生きる毎日。
拓実のように夢は持てなかった。

そうやって日々を無駄にして生きている感覚の中、たまにしか開けないポストの中に1枚封筒が入っていた。
いつもだったら何かのDMや勧誘の封筒だと思ってゴミ箱行きだが、その時ばかりは気になって表を見た。

差出人は書いておらず、でも見慣れたその字に息が詰まる感覚があった。
何度見たってこの字だけは忘れない。

リビングのラグに座り、早まる鼓動と冷や汗を抑えようと手に力を入れる。
白い封筒を開けると中には紙が2枚。
1枚は、チケット。
もう1枚は、便箋。