廻る廻るひつじ雲【宮城高専】 (ページ17)

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「皆に、そういうこと、言ってるんでしょ。」

何も照れてない様子から、小雨は“あ、いつも言ってるから照れないんだろうな”という思考に辿り着いた。

「だから、小雨にも、いつもみたいに、そう言ってるんだ。
あー、女たらし、女たらし。」

照れていることがバレないように。

赤面しているのが勘づかれないように。

そっぽを向きながらそう口を尖らせた。それもそれで声が小さくなっていっていたが。

『別に、全員には言わないでしょ。小雨ちゃん、彼氏いない歴＝年齢で哀れだったから、僕の優しさだよ。』

「…あーあ、期待して損した、やっぱそういう男、なんだね。きっと、女の子弄んで……」

『でも。』

自分が1人で照れているのが恥ずかしくなり、小雨はいつもより少しだけ早口で取り繕った。

だが、突如遮ったその一言に、我に返ったように言葉を止める。

『僕、嘘はつかないからね。』

真っ直ぐと前を向いたその瞳は、確かに小雨を捉えていた。

「………ふーん。」

『何それ、もっと可愛い反応すればいいじゃん……ほんっと生意気、せっかく褒めたのに。』

「誰が、輪廻さん相手に、そんなこと言うかよ。……あ。」

『……どうかした？』

無意識にしてしまった名前呼び。

再度顔は紅潮し、急いで口を抑えて言葉をせき止める。

訝しげな顔をして小雨に目をやる輪廻は、何も気づいていないようだった。

「……別に、何でも。
湊瀬さんの、クソ、非モテ、あんぽんたん。」

『は？突然何、かっわいくな………マジ女っ気の欠片も無いじゃん、ほんとに女子？』

「さっき、可愛いって、言ってたじゃん。」

『話聞いてた？君が可愛いのは“大人しい時”限定ね。』

「……はぁ、本当に、人のこと怒らせるの、得意だよね。」

『沸点低ー、そんなんで怒るの？率直なアドバイスじゃん。』

小雨は自分がバカバカしく思えてきた。

誰がこんな奴相手に照れるもんか。そんな対抗心すら芽生えてきた。

「今のは、バカにしてる。」

『…そんな暴言ばっか吐くからそう言ってあげてる。』

「何、それ……」

何言ってもピシャリと話を遮る輪廻に、小雨は少しばかりイライラしつつもケーキを口に運んだ。

そして、小さな声で、微かに、一言。

「………でも、助けて、くれて、ありがと……。」

『……別に。』

『(……ちょっと危なかった。)』

＿＿＿輪廻の耳が微かに赤く紅潮していたのを、小雨は知らない。