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『………で、僕の昔のツテを辿って、件の呪詛師を追ってたってわけ。僕、結構呪詛師の界隈ではちょっと名が知れてたし。』
人身売買を行う呪詛師を捕まえる為、準1級の呪詛師と任務に出向いていたという。
なんとも物騒な話だ、と小雨は少々引き気味に呆れた。
「………?ちょっと、待って。何で、小学生女児の、人身売買に、私が……?」
『それは君がチビだからでしょ。』
「失礼、私、ちゃんとした、中学生。」
『………不登校なのに?』
「デリカシー、無いの?」
小洒落たカフェのテラス席で、雰囲気にそぐわない会話を繰り広げる。
そりゃあ小雨と輪廻の間にロマンチックもお洒落も雰囲気もクソもあるわけないのだが。
小雨は少し前に席に届いたケーキを口いっぱいに頬張った。
頬張ったとはいえ、その所作からは、どことなく上品さが感じ取れた。
『………うわ、口周りクリーム付いてる。汚。』
「そこは、クリーム取って、食べてあげるところ。」
『そんな甘いことすると思う?僕が』
「………思わ、ない。」
溜息をひとつ着いて、輪廻から諦めたように目を離す。
そして、自分で頬のホイップクリームを拭った。
「それだから、非モテ、なんだよ。」
『ね、僕もモテたいよ。』
「………それは、無い。どうせ、年齢=彼女いない歴、なんでしょ。」
小雨が、さも当然とでも言いたげに輪廻を馬鹿にしたように挑発する。
挑発に気付いていないのか、はたまた何とも思ってないのか。
それは定かでは無いが、輪廻はなんの反応も示さず、テーブルの蜂蜜レモンパイを1口サイズに切り口に運んだ。
『………さ、どーだか。彼女くらいいたよ。
小雨ちゃんもせっかく可愛いんだから、もうちょっと大人しくすれば彼氏くらいすぐできるんじゃない?
所作綺麗だし、
いっつも髪型時間掛けてるし、
顔立ちも整ってるし。
……ちょっと生意気なのが玉に傷だけどね、それなければ育ちのいい可愛い女の子なんだから。』
「…………。」
小雨には、輪廻が何とも思うことも無くそう言ったように見えた。
どんどん熱くなっていく顔で、自分が赤面していることに気付く。
……そりゃあ、女子なんだから異性に急に褒められて嬉しくないわけが無いだろう。
だが、涼しげに紅茶を飲み始める輪廻を見て、“緊張してるのは自分だけか”と少しだけ敗北感を感じた。
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作者名:ほし | 作成日時:2024年2月14日 22時