意図的に ページ41
「クモノコ！終わったのか！」
器用に8つある足を動かし、金属から離れる。
そのわずかな振動で金属が揺れ、色が鮮やかに変わる。
「クモノコ、どうだったんだ？」
《はい、間違いなく転送装置のようなものに取り付けられていたと推定されます。たぶん、ゴシュジンの転送に使われたんだと。…あと、この世界はゴシュジンの世界ではないことも。》
その一言で、エフィルは額を辛そうに押さえた。
ああ、やっぱりだ。
「エフィル…」
「ああもう、どうしろと…」
わずかに、これは何かの間違いで、本当は只の場所転送が誤爆でもしたんだと期待してしまっていたのかもしれない。
そんな無駄な期待は、あっけなく崩れ去った。
「…」
頭の中が真っ白だった。
自分は、異次元へと飛んでしまっていた。
来てはならないところに来たのだ。
無事に戻れはしないだろう。
何も、考えられない。
何も、入ってこない。
もう、絶望の中だった。
クモノコが、次の言葉を発するまでは。
《更にわかったのは、あの部品は転移装置から何かの衝撃で外れたのではなく、何者かに切り離されたということです。》
はい…？
《何者かによって、意図的に取り外されたものと推定されます。勿論、ゴシュジンがこちらへ来た後に。》
「お、おい、クモノコ！それって…」
《ナオ、その人物は不明ですが、転移装置から部品を剥がしてしまえば、その転移装置はつかえずにその人物も帰れません。転移装置が別にあれば、別ですが。そして…》
「クモノコ、ストップ！」
無機質な声でつらつらと言い続けるクモノコを制し、咳払いをする。
「今の、本当か？」
《クモノコは嘘などつきません。》
今まででしっかりと閉ざされていた光の道が、見えた気がした。
暗く先の見えぬ道が、ぼんやりと照らされたような。
「エフィル、意図的って…」
話についていこうと、Aがエフィルをじっと見つめた。
「この部品が単体で転がっていたのは、何かの反動で外れたのではなく、誰かがわざわざ外しておいた、ということだ。」
Aは、目を大きく見開いた。
「それってつまり…」
「つまり、誰かが俺たちの事を操ろうとしているのかもしれないと言うこと。」
エフィルは息を吸った。
「その人物は、今も俺たちを見張っているかもしれない。俺たちに、何かをしてくるかもしれない。」
「けれども、あなたが元の世界へ戻る鍵となるのが、その人物なのね？」
エフィルは頷いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「逆トリップ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
四夜(本物) - 完全に黒歴史で恥ずかしい、うらつく頼むからログインさせて (2019年7月23日 21時) (
レス) id: dfaad9320b (このIDを非表示/違反報告)
妙子(プロフ) - 四夜さん» 冷静な分析出来る子なのに、大事な場面で音出しちゃうって可愛い存在だよねクモノコ♪ (2014年7月16日 8時) (レス) id: 30085790ce (このIDを非表示/違反報告)
四夜(プロフ) - 続編続きました。これからもよろしくお願いします。 (2014年7月9日 15時) (レス) id: 052d738e23 (このIDを非表示/違反報告)
四夜(プロフ) - 妙子さん» 普通、トリップを実際にしたらもっと混乱しそうですけどね…クモノコは私のお気に入りですw (2014年6月19日 15時) (レス) id: 052d738e23 (このIDを非表示/違反報告)
妙子(プロフ) - お互いに疑問があり過ぎて不安が勝つ(・_・;)クモノコが導いてくれるといいけどね (2014年6月19日 8時) (レス) id: 30085790ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：四夜 | 作成日時：2013年12月4日 16時
