31. 疑問 ページ31
翔side
雅紀のトップを目指そう宣言の次の日、約1年ぶりに授業に出た。うちの学校はその一年で受ける授業が決まっててそれを任意で取っていく。
出席しなくても学期ごとにあるテストに合格すれば次の学年に進級出来る。大学に似てるところがあるかも。
それ以外にも実技とか色々条件があるからテスト受かっただけで進級は出来ないけど…普通は授業受けないとテストなんか受からないから皆んな受けるけどね。
…智くんは大丈夫なんだろうか?
朝からずっと掃除してくれて、本当にありがたい。まだ4月だし水も冷たいのにずっと拭き掃除してくれ…?
そこで俺はある違和感に気付いた。
水が冷たい…?
さっき智くんの所へお昼届けに行った時、俺は座ろうと思ってバケツを移動させた。
…そのバケツ温かかった…
智くんの異能は水、バケツの中の水はおそらく異能で出したものだろう。家の中に水道はあるだろうけど入った様子はなかった。
でも…
水の異能を使う人に水の温度を変える力なんてない…
智くんは朝からずっとあそこにいるって言ってた。なのにバケツの中にはお湯が入ってた。
どこからかお湯を調達出来たのかもしれないが、なんだか腑に落ちない。
何年も同じ学年にいるの俺と智くんぐらいだったから、前から智くんが何かを隠しているのは薄々気づいてた。俺だって隠してるし、触れられたくないのも分かる。
だから、別に無理に聞き出そうとは思わないけど、なんだか急に石井智が遠い存在のように感じた。
もうすぐ寮という所で背後に異能の気配を感じて振り返る。
赤い炎の鳥がこちらに向かって飛んで来る。
俺は重いため息を吐き、その鳥に向かって手を差し出す。
鳥は綺麗に手に止まり、そのまま炎になり、炎が収まった俺の手には一通の手紙が現れた。
もう一度重いため息を吐くと、意を決して手紙を開く
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翔様
定例会合の日程が決まりましたのでご連絡させて頂きます。
櫻井家定例会合
5月11日
櫻井家
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テスト前の日曜か…
これは今から本腰入れて勉強始めないと間に合わないな
これから帰って来た後はしばらく勉強なんか出来ないし…
まさか、これが全ての序章になるなんてな…
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作者名:紀衣 | 作成日時:2021年1月11日 21時