拝啓、僕が歩んだ日々へ (ページ26)

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どー。ページ26

訊ねた本のタイトル、傾けられた傘、掴んだつめたい掌、誰もいない教室、環状線で40分の海、そして痩せ過ぎた体。

雑多な部屋の片隅で、彼女との僅かな思い出の追憶を繰り返す。僕と四角形を覆う布切れが3mmの隙間を開けて笑った。
写真のひとつもない僕らの共有した時間は、ちゃちなセロハンテープとコピー用紙で構成されていた。

教室の隅、僕のしょうもない冗談に初めて声を上げて笑った彼女の高い声は、もう上手く再生できやしない。

最期へと駆け走る彼女は確かに、口の端を歪めて笑っていた。フェイクでもピエロでも無い穏やかなその微笑みは、どこまでも清らかで美しい。

おかしい。
彼女と同じ黒髪の頭を掻きむしった、この世からひとり見知った女が死んだというそんな簡単な事項が何故僕をここまで悩ませる。君の温度を2度と感じることのない箱に興味は湧かない、嫌だ。嫌だ。君と永遠に、ポツンと浮かぶあの星の歌を零していたい。旋律に凭れて凍えた星の歌を。

彼女と僕は心中する筈だったのに何故僕はまだ生きているんだろう？
それとも僕が気が付いていないだけで本当はもう死んでいるとか？

あの少し跳ね上がった目尻をなぞりたい。あの痩せ過ぎた腕に腕を絡めたい。あの四角形をした爪を口に入れたい。あの薄い唇に愛されたい________

『あなたは私と心中するんですよ、必ず』

くだらない妄想の棘は、体のどこかに突き刺さって取れない。

僕は漸く彼女の真意に気が付いた。彼女は僕を愛していたのだ。

もし結ばれ無くても心の何処かに残る。結ばれれば万々歳だが、その可能性は低い。もし上手いこと自分が死ねば僕がいつまでも疑問と蟠りを抱えて生きて行く様に。

ねぇねぇ、Aちゃん。そこまで僕に信用が無かったのかい。

お前、酷いやつだね。ぼそりと呟いた。

彼女の花のような笑みを想う。あの微笑みを見た後でどの女の頬に触れると言うのだろう、どの女に唇を這わすと言うのだろう。

そのまんまだって、愛したかもしれないのに。お前、酷いやつだね。

☆

ありがとうございました。
えぐすてきな企画におさそい頂けてうれしきでした～！たのしかったです！

どー。があてはめた漢字は「塵生」です。
ちりのように死んだヒトと生きるヒトのはなし。

しつれいしました。

どー。( メンヘラではない )