拝啓、僕が歩んだ日々へ (ページ23)

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あなた以外いらないページ23

「あれ、Aじゃん。珍しいね」

そらるさんとのデートの中に、偶然会った同僚に声をかけられた。
正直休日にまで同僚と会いたくないんだけど、と出そうになった溜息を飲み込む。
隣の彼をちらりと見れば、興味がないとでも言うようにその視線はスマホの画面に向いている。

この女の視線が私から彼に写った時、目の色が変わったのを私は見逃さなかった。
会社でも他の同僚のしていた噂をふと思い出す。
それは、この女が過去にも他の男を寝取った、だとかそういう類のあまりよろしくないもので。
きっと彼のことも私から奪おうとしているのだろう。

そんな女がこちらは？と聞くのだから答えないわけにはいかなくなってしまった。

「彼氏のそらるさん。で、こっちは私の同僚」

もともと紹介するつもりはなかったから女との関係だけを伝えると、それが気に入らなかったらしく女は自分から名乗った。
それに対して彼は軽くお辞儀をするだけで、他に何もリアクションを取らない。

女がそれをどう受け取ったのか分からないが、彼がターゲッティングされてしまったのは恐らくだ。
またね、と告げて足早にその場を立ち去ろうとするもすぐ近くの交差点に足止めをされた。

先ほどから嫌というほどに突き刺さる視線の先をちらりと見ると、あの女と視線がぶつかる。
するとニタリとあまりいい印象を与えないような笑みを浮かべた。

***

次の日も休みだったらどんなに良かっただろうか。
案の定、あの女は出勤早々に私の元へとやってきた。

「お昼、一緒に食べない？」

昨日と同じような笑みを浮かべながらそう言ったこの女。
恐らく宣戦布告でもするつもりなのだろう。

ちょうどよかった、私も話がしたかったの。

驚いたのか一瞬目を見開いたものの、すぐに笑みを貼り付けてまたお昼にと告げ自分のデスクに戻っていった。

昼休みが終わり、自分のデスクに戻り仕事を再開する。
昼休みどころか定時を過ぎても、あの女のデスクには誰も座っていなかった。