君に沈む ページ21
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天月くんに沈んで生きてきた人生だった
ありきたりだけれど彼が居ないと駄目なくらいに。彼しか居ないと断言できるくらいに。
大好きや愛してるなんて軽い言葉で表せるほど私の彼に対する気持ちは薄っぺらいものじゃない。
彼は私の生きる意味そのものだった。
そんな何よりも特別な彼が亡くなった。
体が丈夫だという事だけが取り柄なんだと自信ありげに語っていた彼は居眠り運転による交通事故、というよく聞くけれど本当に恐ろしい死因で呆気なくこの世を去った。
「ランニングに行ってくるね」という彼の最期の言葉を健気に待っていた私は彼が死んだという知らせを聞いて心臓と息が、止まった。
「…嘘、なんで、嫌だ!!」
その言葉しか出なかった。嘘だ、嘘に決まってる。だってさっきまで彼はここにいて笑っていたのに。その彼が死んでしまった?
涙とともに出てくる疑問、どうすればいいかわからなくてひたすら嗚咽をこぼした。
先程から鳴り止まない携帯のバイブ音やチカチカと光るライト。どうすればいいか分からなくて電源を切った。
生きる意味を一瞬にして奪われてしまった私はどうすればいいのかと彼の匂いが残ったクッションを抱きしめる。
「A、どうしたの?」
クッションに顔を埋め、彼の匂いを吸い込んだ。
すると彼の声が脳内で響く、馬鹿みたいだけど涙は止まらない。
私にとってこうやって脳内で彼の声を再生する、他人から見れば痛々しい行為も今は必要なのだ。
…でも何だか哀しいからさらに抱きしめる腕に力を込めた。
「天月くん、還ってきてよ、嘘だよね」
「A、ごめんね」
「っ、天月くん…」
ゆっくりと、目を閉じた。
夢に、彼との思い出に、ゆっくりとゆっくりと、沈む。
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ゆーき - エッ智春さん!?戻ってきてたんですか!?!?うわああああめっちゃ嬉しいです!(;_;)そして大好きな作者さんばかりなので毎回楽しく見させていただいてます◎これからも応援してます (2016年3月23日 18時) (レス) id: 675204a53d (このIDを非表示/違反報告)
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