拝啓、僕が歩んだ日々へ (ページ13)

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☆ ページ13

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「A、お昼食べよ」

午前の授業が終わり、昼休みとなった。
がたんと前の席の椅子に座ってこちらに向き直る友人。

彼女は女子バスケ部に所属している活発な子で、
同じクラスには勿論、他クラスにも友人の多い、所謂人の輪の中心にいるようなタイプだ。

そんな彼女がどうして私と共に行動しているのかはよく分からない。

声の出せない私に同情しているからだ、と彼女の友人から言われたことがないわけではないのだが、
特段気にする必要もなかったし、事実そうなのだろうと突きつけられた言葉に否定を覚えることもなかった。

こういう時、不謹慎ではあるが声が出なくて良かったと思うことがある。

私は元々思ったことをそのまま口に出すような性格ではなかったけれど、
それでも無意識に言葉にしていたことが多少なりともあった。

それが原因で友人関係に亀裂が入ったこともあったので、
声が出ない、ということはうっかり出そうにも出せないのだ。

自分の言葉を声にして伝えることは、私には出来ないから。

だから私が彼女に思うことがあっても、
その思いを文字にしなければ伝わることがない。

事実、奪声症を発症してからは
コミュニケーションは取りづらくなったものの、友人関係はどうかと問われると、以前よりは円滑に築かれているように思う。

そもそも、奪声症を患ってから友人が減ったこともあってのことなのかもしれないが。

「ねえA」

彼女に話し掛けられてそちらを向く。
彼女は私をじっと凝視して、あのさ、と続けた。

「私は……あんまり触れられたくないのかなって思って、Aにこの話をしたことなかったけど。
やっぱ気になるから聞いても良い？」

彼女が聞きたい、と言うのは恐らく奪声症のことだろう。
返事が出来ない代わりに頷くと、彼女は一度躊躇ってから口を開いた。

「……声、出せないって、つらくない？」

彼女から問われたことは何というか、私には理解しがたくて、
どういうこと、と問う代わりに首をかしげた。

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