第八話 ページ10
ランチタイム。私の周りに人がいないのを誤魔化したくて食堂に向かった。
一番端にあるテーブルの、一番隅に近い席に座って弁当を開く。料理長が作ってくれる弁当はいつも美味しいし、手が凝っている。それを嬉しいと思うのは初めてじゃなかった。
一人で食べている私をちらちらと見てくる生徒はいたけれど、私の肩書きは知れ渡っているから誰も声をかけてこなかった。ああ成程、私とアレン様は"まだ"仲の良い恋人なのだと思われているらしい。
もう恋人じゃないのに。
一人で食べるお弁当は、いつも通り美味しかった。
午後の授業も終わり、生徒会室へ足を運ぶ。
ドアノブに手をかけて中に入れば、ヴィシア様は椅子に座って、優雅に紅茶を飲んでいた。
「やあ。今日は顔色が良くてなにより」
「昨日はご心配をおかけして申し訳ありませんでした。今日の仕事は？」
頭を下げて謝罪を述べた後、机の上に書類がないか探す。そんな私の様子を見て、ヴィシア様はふふ、と笑った。
「その様子だとまた同じことを言われることになるよ？」
「……申し訳ありません」
そうはいっても、私はなにかをやっていなければ、落ち着かない。
なぜって、私が要らない存在だと言われているようだから。
コン、コン。
ふっとよぎったその思いを打ち消すように、生徒会室のドアをノックする音が響いた。ヴィシア様が「どうぞ」というと、控えめにそのドアが開かれる。
そこにいたのは、エリザだった。
どうしたのだろう？ と首を傾げていると、彼女は私を見た。
「ガルワ様、ドゥルーズ様が貴方に用事があるらしくて」
「？ アレン様が？」
頷く彼女は、さっと身を引いて廊下に目を配る。
……いるのか。
「ドゥルーズくん、どうぞ」
「……失礼します」
挨拶もそこそこに、アレン様は私に近づいてきた。
こんなに近いのは、この前のパーティ以来だ。
「どうしましたの、アレン様」
「エリザを案内してくれ」
「……はい？」
アレン様は何をおっしゃっているのだろう。案内？ 多分学園の案内の事だろうが、それはアレン様でもできるのでは。迷うなどあり得ないだろうし……。
とりあえず、と私は口を開いた。
「お言葉ですがアレン様、案内なら貴方様でもできるのでは？」
「違う、そうじゃない。彼女が花を摘みに行きたいらしくて」
「ああ……。はい、わかりました」
「ロワ様、ついてきてくださいまし」とエリザに一声かけ、私は向かう。
女子用トイレがある場所へ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 20人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふう(プロフ) - 読ませて頂きました!!もうほんと途中胸痛かったけど、最後ハピエンで良かったです!!何か、自分をみてくれないって思ってたところがえりざ?ちゃんと夢主ちゃん似てるな、って思いました!!素晴らしかったです! (2019年9月13日 17時) (
レス) id: 98934c9ea5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：真冬 | 作成日時：2018年1月19日 23時
