第七話 ページ9
アレン様は遅刻をせずに教室にいらっしゃった。するとすぐに私の元へやってくる。
「A、今朝はどうした。いつもこの曜日には迎えにくるよう、お前が言っていただろう」
「すみません、アレン様。てっきり彼女をこちらに案内するのかと思いまして……。今度からきちんとご連絡致します」
「……はぁ、そうか。ならいい」
アレン様は、私と話すときはいつも無表情だ。いつからか私はそんな彼の表情に気づき、幼い頃のように笑うことはできなくなっていた。自然と彼と私との会話は冷たくなっていった。
奇跡かなにかか、エリザの席はアレン様のお隣だった。アレン様はエリザと談笑している。アレン様が日常で笑うのなんて、指が三本もあれば足りるぐらいにしか見たことがない。
私は彼のことを知らない。幼い頃からずっと一緒にいたのに、だ。彼の好物も趣味も知らない。お悩みの相談なんてもってのほか。彼が言うのを待とうと思っていたけれど、多分私が知らないのは彼が私に知られたくないから。
とんだ嫌われ者だ。我ながら笑えてくる。私は空回りしかできないのか、と。
朝のホームルームは終わり、授業が始まる。
私はいつも通りに挙手をして答える。エリザも。
国語の時間での音読で、彼女は噛みながらも一生懸命読み上げた。外国語の時は流暢に読めていたのに、とちぐはぐな彼女にそう思った。
積極的な態度が嬉しいのか、いつも不機嫌な顔をしている数学の先生は珍しく笑っていたし、機械的に授業を進める社会の先生は何度か無駄話をしてくれた。
「エリザがいると授業が楽しいわ」
「エリザがいると場が和むわね」
そんな中、私に聞こえるか聞こえないかの声が、耳に入ってきた。
「ガルワ様がいると、なんとなく気圧されて楽しいなんて思えないですし、エリザがいると心も軽くなれますわ」
私は、もう消えた方がいいのかもしれないな、と。ただそう思った。
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ふう(プロフ) - 読ませて頂きました!!もうほんと途中胸痛かったけど、最後ハピエンで良かったです!!何か、自分をみてくれないって思ってたところがえりざ?ちゃんと夢主ちゃん似てるな、って思いました!!素晴らしかったです! (2019年9月13日 17時) (レス) id: 98934c9ea5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真冬 | 作成日時:2018年1月19日 23時