第三十一話 ページ33
「……」
一人の時間は、やはり心が休まる。なにも考えなくていい。なにもしなくてもいい。たまに寮母が部屋を訪ねてくる以外は平和な時間だ。何度か繰り返し寝たせいで少しだけ吐き気がするが、すぐになくなるだろうと放っておいた。実際、吐くことはなかった。
今頃、エリザは授業で発表でもしてるのだろうか。あの鈴のような可愛い声で。あ、今はランチタイムか。なら、アレン様とアピア様と、ご飯を仲良く食べているのかもしれない。家族の話で盛り上がっているのだろうか。それとも最近流行りのものでも話しているのだろうか。私にはそんな話はできない。家族との思い出も、世間に対する興味もあまりないし。
ただなにかを思うだけの時間だが、あっというまに過ぎているような感覚があった。時計を見れば五分も経っていない。思わずクスリと笑ってしまった。
下校時刻になったあとも、寮母以外は誰も来ない。来なくていい、とさえ思った。ここで変に心配されたら、今後の生活で、心が危うくなりそうだ。
だというのに、何故だか私の部屋には来訪者がやってくる。エリザと、アレン様。アピア様は先に帰ったのだろうか。いや、恐らく後期の規律委員に関することで忙しいのだろう。
「A様……？ あの、体調はよくなりましたか？ 今日は突然休まれたので、何かあったのかと……」
「ロワ様。失礼ながら、扉を挟んでの対話でよろしいかしら」
あれ、私、彼女に名前呼びをされていただろうか。
違和感に首を傾げた時、アレン様の小さな舌打ちが聞こえた。びくりと震える自分の体に笑い声が出そうになる。まだ、彼に嫌われたくないと思っているらしい。馬鹿だな、と冷たい目で自分の握られた手を見る。
エリザは「はい」とそのまま私の返事を待った。素直でいい子。その認識は揺るがない。
「隊長のことについては、お気になさらず。しっかり休んだおかげで回復いたしました。明日はきちんと出席するつもりですわ」
「本当ですか！？ よかった……」
「いくぞ、エリザ。もう用事は済んだだろう」
「あ……わかりました。ではA様、また明日」
「えぇ、また明日」
惨めな気持ちになる。私は彼に愛されていないのだと実感してしまう。じわり、となぜか視界が歪んだ。目に何かが溜まっていく感覚があった。なんで。私は、こんな。
ぽたり、とそれはシーツに落ちた。嗚咽が漏れ始めた。
「ひっ……っは、あぁ……」
下手くそな泣き方だと笑いたかった。
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ふう(プロフ) - 読ませて頂きました!!もうほんと途中胸痛かったけど、最後ハピエンで良かったです!!何か、自分をみてくれないって思ってたところがえりざ?ちゃんと夢主ちゃん似てるな、って思いました!!素晴らしかったです! (2019年9月13日 17時) (
レス) id: 98934c9ea5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真冬 | 作成日時：2018年1月19日 23時
