【金カム】地獄の果てで会いましょう 2【尾形】 (ページ7)

今日:10 hit、昨日:14 hit、合計:31,626 hit

樺太へ 2 ページ7

その時、扉を数回ノックする音が聞こえてきた。
返事をする間もなく勢い良く開かれると、そこには鶴見中尉がいた。後ろには背の低い軍人が一人そばに付いている。彼は私を見ると、「お目覚めかな」と言う。

「……はい」
「具合はどうだ？まだ腹部が痛むだろう」
「そうですね……ちょっと痛みますけど、そのうち治ると思います」
「そうか。それは良かった。不死身の杉元といい、君といい、なかなかしぶといな」
「杉元さんが…生きているんですか！？」

思わず身を乗り出して聞くと、彼は目を細めた。

「あぁそうだ。今は別室にいるが命に別状はない」

それを聞いて、思わずよかったと安堵する。鶴見中尉によると、囚人は制圧され、谷垣さんやインカラマッさんも一命はとりとめたらしい。

「私達はこれから樺太へ向かう。アシリパという重要な鍵を手に入れた今、キロランケはかつてのゲリラ活動をしていた仲間と合流する可能性が非常に高い。我々としても放っておくわけにはいかないのだ。そこで、我々は明後日出発することに決まったのだが……」

そこまで言うと、彼は私の方をじっと見る。
何か言いたいことがあるのかもしれないが、私には何も思いつかなかった。
しばらく沈黙が続いたあと、口を開いたのは彼の方であった。

「君はどうしたい？」
「……」
「このままここに残ることもできるし、我々と共に着いてきたいというなら連れていってもいい。だが…女性である君にとっては過酷なものになるだろう」

そこまで言うと、鶴見中尉は底のしれない瞳でじっと私を見つめた。まるで私の心の奥まで見透かすようなその視線に耐えられず、思わず俯く。
きっと鶴見中尉は、私に利用価値があるかどうかを見定めているんだ。だから、遠回しに言っているのは、私がここから去るように仕向けているのだと悟った。
ここで逃げたら私は一生後悔することになる。そんな気がした。
私は、尾形さんのことを何も知らない。だからこそ、私は彼のことを知りたかった。

たとえそれがどんな結末になろうとも。