【金カム】地獄の果てで会いましょう 2【尾形】 (ページ41)

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ヤマダ曲馬団ページ41

翌朝、私達は岩息さんに別れを告げた。

別れ際、月島軍曹が「死んだ気になってロシア語を勉強するんだな」と岩息さんに告げる。彼はそれを聞いて力強く笑って去っていった。彼なら、どこへ行っても力強く生きていけるような気がする。

それから、犬橇で数日かけて、私達は樺太最大の街・豊原へと辿り着いた。私達は三手に別れ、街を散策しつつ、アシリパさんたちの情報の聞き込みを行っていた。私はというと、鯉登少尉と行動していた。しかし、未だに有益な情報は手に入らないままでいた。

「…なかなか難しいですね」
「そうだな……」

私は隣を歩く鯉登少尉に話しかける。だが、彼は心あらずといった様子で、なぜかそわそわしているようだった。
どうしたんだろう。

「…鯉登少尉殿？どうしたんですか」

私が不思議に思って鯉登少尉の方を見ると、彼もこちらを見ていたようで目が合う。

「…なんだか、逢引のようだな、と…思ってだな…」

鯉登少尉が照れくさそうに、嬉しそうにふにゃりと笑うものだから、私まで恥ずかしくなってきた。思わず、私もつられて赤面してしまう。
意識してしまったせいで、さらに恥ずかしくなってきた。私は俯きながら、なんとか言葉を探す。

「……隣を歩くのが、私なんかで申し訳ないです」

やっとのことで出てきた言葉がこれだった。我ながら情けないと思うが、他に思いつかなかった。だけど、鯉登少尉はそんな私の言葉に首を横に振る。

「A。私はそういう顔をさせたくて言ったわけではない」

鯉登少尉の大きな手が、私の手を包んだ。私は驚いて顔を上げる。
すると、目の前には真剣な表情をした彼がいた。

「Aだから良いんだ。他の女性だったらこんなこと言わんぞ」

……この人はどうしてこう……さらっとこういうことを言うのか……。

私は顔を赤くしたまま、黙り込んでしまった。そんな私を見て、鯉登少尉は優しく微笑んでくれる。その笑顔は、私にとって眩しく映った。

「お前はもっと自信を持て。Aはとても魅力的だ」

彼の真っ直ぐな視線に耐えきれず、私は目を逸らす。