【金カム】地獄の果てで会いましょう 2【尾形】 (ページ38)

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伝えないといけないことページ38

バーニャから出て、宿の部屋に戻る寸前、私は「杉元さん」と彼の名前を呼んだ。

「ん？どうしたの、Aさん」
「お話があります」
「えっ」

杉元さんの顔を見つめながら言うと、彼は驚いたように私を見た。ここではなんだから、ということで私たちは人気のないところへと移動する。

「どうしたの、改まっちゃって」
「あの、ですね……」

いざ言おうとすると、言葉が詰まる。

「大丈夫？ゆっくりでいいよ」

杉元さんが優しい声でそう言うと、私は深呼吸をして口を開いた。

「杉元さん、私、あなたに伝えないといけないことがあるんです」
「伝えないと、いけないこと」
「はい」

杉元さんが、ごくりと唾を飲み込む音が聞こえてくるようだった。その表情は固く、緊張しているようだった。

「杉元さんは…どうして、私が貴方達と一緒に樺太へ来られたか知っていますか」
「どうしてって……俺と同じように、Aさんはアシリパさんから信頼されているからじゃあ…」

私は首を横に振った。そうじゃないのだ。私は、まだ鶴見中尉との取引の話を彼にしていない。だから、私は言わなくてはいけない。真実を。

「私は鶴見中尉と取引をしたんです。私は…鶴見中尉に暗号の解き方の一部を教えました。そして、その代わりに私は尾形さんの情報と、樺太まで連れてきてもらうことを条件に出したのです」
「……え？」
「私、本当は……」
「待ってくれ！どういうことだ！？」
「……ッ！」

突然、杉元さんが大声を出すものだから、驚いてしまった。
彼の顔を見ると、その目には怒りの炎が見え隠れしていた。

「Aさんは、刺青の暗号の解き方を知っていたのか？知っていて、黙っていたのか？！」

杉元さんの問い掛けに私は答えられなかった。知っていて黙っていたのは、本当だから。
それが裏切りといえば、裏切りになるのかもしれない。でも、私は杉元さんを騙したかったわけでは断じてない。ただ、刺青を集めていかなければ確信が持てなかったから、話せなかっただけだ。