【金カム】地獄の果てで会いましょう 2【尾形】 (ページ37)

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残された者たちページ37

だが、再び問題が発生する。バーニャには、先程よりも男の人数が増え、女は私だけだ。私はバーニャの小屋の隅に縮こまって壁側を向き、気配を消していた。
他のみんなには、私の方を絶対に見ないでほしいということと、私を空気として扱ってくださいとお願いをしてある。

私のことはよそに、男たちは話し合いが始まった。殴り合いで何か分かち合ったのか、杉元さんは刺青の男…岩息さんに「あんたは殺したくない」と言う。

「その刺青を俺達に写させてくれ。俺達が必ず金塊を見つける。金塊が見つかれば、その刺青を欲しがるやつはいなくなる」

杉元さんのその言葉に付け加えるように、月島軍曹も「樺太を出ろ。出来るだけ西へいけ」と助言をする。

「ところで…杉元さんがさっき言ってた名前…」
「俺なんか言ってた？」
「アシ……」
「アシリパさんを知っているのか？！」

岩息さんの言葉に、杉元さんが食いついた。岩息さんが覚えていたのは、刺青をもつ囚人…つまり白石さんを連れていたからだという。そこで、彼らの後をついて来たときに聞いたそうだ。“杉元さんと私が生きている”と二人は信じている、ということを。

────アシリパさんは、私達が生きていると信じてくれている。

その事実が嬉しくて、胸がいっぱいになって思わず泣きそうになってしまう。
思い出すのは、美しい青い瞳を持つ少女だ。

「アシリパさん…」

早く会いたい。だけど…。
私の脳裏には、もう一人、どうしても忘れられない人が浮かび上がる。
……尾形さん。
アシリパさんと再会するということは、尾形さんとも再会するということでもある。彼に再会したとき、私はどんな顔をすればいいのだろう。

「……尾形さん…」

ぽつりと呟いた声は、誰かに拾われることなく消えていった。