【金カム】地獄の果てで会いましょう 2【尾形】 (ページ30)

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激突！壁デスマッチ 3 ページ30

その単語の意味を理解するまでに数秒かかった。その間、鯉登少尉はじっと私を見据えている。
やっと意味を理解した瞬間、ぶわりと身体中から汗が噴き出した気がした。
今なんて言ったこの人は？！鯉登少尉の口から発せられた予想外の要求に頭が真っ白になった。
口付け？！私が？！鯉登少尉と？！混乱して何も言えない。
すると、そんな様子の私を見てか、彼は慌てて訂正を入れた。

「ま、間違えた！違う！本音を言えばそっちの方が………ってちがう、そうじゃない！そうじゃなくて……その……抱擁を、してほしい」

鯉登少尉はそう言うと、再び黙ってしまった。
抱擁っていうことはつまり……鯉登少尉を抱きしめるということだろうか。先程よりも段階が下がったが、それでも十分すぎるほどの衝撃だった。

「そ、そんなことで良いのなら全然構いませんけど……」
「ほ、ほんとうか！！」

私が了承すると、鯉登少尉はぱあっと表情を明るくさせた。
…そんなに喜ぶことなのかな。
よく分からないけれど、本人が喜んでやる気を出してくれるのなら、良いのだろうか。
そんなことを考えていると、ちょうどよくスチェンカがもうすぐ始まるという合図が鳴る。

「では、行って来るぞ！」

鯉登少尉は元気良くそう言うと、私に背を向け、意気揚々とスチェンカの輪の中へと入って行った。
そして、ロシア語での合図と共にスチェンカが始まった。開始早々、杉元さんが会場の柵まで殴り飛ばされた。
その光景に思わず、「きゃあっ！」と悲鳴が出てしまう。殴り飛ばした人物は、刺青の囚人だった。

刺青の囚人は「もっと！杉元さんを！教えてくれッ！！」と叫び、どこか嬉しそうに杉元さんを殴っている。杉元さんも負けじと、殴り返してはいるが、杉元さんが若干押されているような気がした。

気がつくと、鯉登少尉や月島軍曹、谷垣さんなどは他のロシア人を相手にしていたが、相手をなんとか倒し、残りは刺青の囚人のみとなっていた。四人が囚人の男と対峙する。