【金カム】地獄の果てで会いましょう 2【尾形】 (ページ25)

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スチェンカ 2 ページ25

「あの、どうかしました……？」
「……他には何かないのか。例えば……ほら、あるだろ」

鯉登少尉は少し照れ臭そうな様子で目を泳がせながら言う。
他……？何かあっただろうか。

「えー……と、よく頑張りましたね……とかですか？」
「それもあるが……！いや、それも嬉しいんだが……！！」
「じゃあ他に何を言えと……」

鯉登少尉は「うぅん……」と悩み始めるので、私は首を傾げる。すると、鯉登少尉は少し不貞腐れながら「……私は格好良くはなかったのか」と小さく零す。

そこでやっと彼が求めていることを理解し、思わず笑ってしまう。……そんなこと気にしていたのか。なんだか最初の時と印象が随分変わったな……。

「はい。鯉登少尉殿は格好良くて、勇ましくて、とても素敵でしたよ。さすが鯉登少尉殿ですね」
「そ、そうか！格好良かったか！ならいい！！」

鯉登少尉の顔がぱあっと明るくなり、満足げに笑う。本当にコロコロ表情が変わる人だなぁと思っていると、杉元さんたちがいないことに気がついた。

辺りを探してみれば、彼らは先に外に出ていったのが見える。鯉登少尉と共に慌てて追いかけると、そこには杉元さんと谷垣さん、そして月島軍曹の姿が立っていた。その視線の先にあるのは、先程私に話しかけていた男の背中だった。
鯉登少尉が「誰だ？何を話していた」と杉元さんに尋ねたが、杉元さんは「なにも」と返事をした。それから私達は、近くの宿に泊まり、明日に備えて早めに就寝することにした。

…はずなのだが。

「A、ちょっといいか」

宿の自分の個室へ戻ろうとした時、鯉登少尉に話しかけられた。
振り返れば、彼は真剣な眼差しをこちらに向けている。ここではなんだから、と私の個室へと招き入れようとすると、鯉登少尉は部屋の前で立ち止まったまま動こうとしない。

一体どうしたというのだ。

「鯉登少尉？入らないんですか？」
「……いや、その…。密室に男女二人というのは……まずいんじゃないのか」

彼の言葉に、一瞬頭が真っ白になる。