【金カム】地獄の果てで会いましょう 2【尾形】 (ページ19)

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音と恩 5 ページ19

「な、……」

言葉にならない声が口から漏れる。
鯉登少尉は、そんな私の反応を見て満足げに笑い、「ん？」と顔を近づけてきた。

「ば、馬鹿じゃないの(ご、ごじゃっぺだ)…」

やっと出た一言は、自分とは思えないくらい弱々しいものだった。

心臓の音がうるさい。鯉登少尉の顔がまともに見られない。
鯉登少尉のほうが見れず、周りのみんなの方へと視線を向けると、なぜだかみんな固まっていた。
谷垣さんや月島軍曹は、なぜか頭を抱えているし、チカパシくんたちは何故か拍手している。

杉元さんだけは、複雑そうにこちらを見ていたけれど。
私は恥ずかしくなって、下を向いてしまった。
鯉登少尉に至っては「キェ…」だとか「わっぜむぜ…」と謎の声を発しながら、天を仰いでいる。
そして、しばらく沈黙が続いた後、ようやく鯉登少尉が動き出した。
私の手を握ると、立ち上がって真剣な眼差しで私を見る。

「返事はすぐでなくて良い。じっくり考えてくれ」
「え、いや…あの、」
「それまでは、お前への気持ちを隠したりしない。お前を大切にしたいと思うこの心を、お前に伝え続けよう」
「……！？」

鯉登少尉の言葉に驚いているうちに、彼は私の頭を撫でると、「今日はもう休め」と満足気に笑って自分の寝床へ行き、月島軍曹と何かを会話し始めた。

……なんだったんだろう今のは。

鯉登少尉の行動に思考が追いつかないまま、私はその場に座り込んでしまう。子供たちは、飽きたのか、もう鯉登少尉が離れるなり、寝床へ行ってしまった。
すると、様子をずっと見ていた杉元さんと谷垣さんが声をかけてくる。

「……なんだか面倒くさいことに巻き込まれたようだな」
「とりあえず、鯉登少尉に変なことされたら大声で呼んでね。俺がすぐに助けに行くから」

二人とも同情と心配が入り混じったような表情で私を見ている。
そして、二人はそれぞれ自分の寝場所へ戻っていった。

(ど、どうしよう…)

一人残された私は途方に暮れた。