【金カム】地獄の果てで会いましょう 2【尾形】 (ページ1)

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網走監獄ページ1

そしてついに新月になった。話し合いの結果、私は夏太郎さんと谷垣さんと共に川岸にある丸木舟で待機となった。今頃、アシリパさんたちは都丹と共に網走監獄へ侵入している頃だろう。

私が心配しても仕方がない。今はただ、彼らの無事を祈るだけだ。

心配ではないが、心に引っかかるものがもう一つある。それは前日に聞いた、尾形さんが自刃した第七師団団長の妾の息子であると言う話だ。尾形さん本人は、軍をどうこうするつもりはないと言っていたが、それが本当かどうかはわからない。

私は、彼のことを何も知らない。

知らなければいけないと思うが、彼はなかなか自分について語ろうとはしなかった。
考えれば考えるほど心の中に黒い雲が立ち込めるような気がして、落ち着かない気分になる。

そんなことを考えていると、不意にけたたましい鐘の音が鳴った。

「鐘の音…！？」

私は驚いて顔を上げる。

「なんだ！？」
「侵入を知らせる鐘だ……あいつら見つかったのか！？」

すると、隣にいた谷垣さんと夏太郎さんが立ち上がった。私は二人につられて立ち上がるとあたりをよく見渡す。すると、遠くから誰かが灯りを持って走ってくるのが見えた。よく見ると、コタンで待機していたはずのインカラマッさんだ。
彼女は谷垣さんに近づくと、今すぐここから逃げろという。

「谷垣ニシパから小樽へ偽名の電報が届くと私は彼らに教えていました」
「……インカラマッ、お前は何を…」

谷垣さんが呆然とインカラマッさんを見つめる。すると、突然、近くにあった橋が爆発した。思わずその場に身をかがめる。

「今日までずっと…鶴見中尉と内通していたということか？インカラマッ！」

谷垣さんがインカラマッさんを睨みつけると、彼女は悪びれる様子もなく、淡々と答えた。

「杉元さんたちは失敗しました。こうなったいま、のっぺら坊とアシリパちゃんを無事にここから連れ出せるのは鶴見中尉だけです」
「でもそしたらアイヌの金塊は第七師団に流れるが、お前はそれでいいのか？」
「金塊なんて誰が手に入れようが私にも谷垣ニシパにも関係のない話でしょう？」
「インカラマッさん…」

私は彼女の言葉に衝撃を受けた。まさか彼女が裏切って鶴見中尉と内通していたなんて。目の前が真っ暗になりそうだった。
インカラマッさんは、ぽつりと彼女の名前をつぶやいた私を意味有りげに一瞬見つめたが、視線をすぐそらした。