【金カム】地獄の果てで会いましょう【尾形】 (ページ33)

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ラッコ鍋 3 ページ33

心臓がうるさい。走ったせいなのか、それともまた別の理由があるのかはわからないけれど、とにかくこの熱さをどうにかしたく、ひたすら走った。

しばらく走っていると、あたりはすっかり暗くなっていた。

「おい」

突然声をかけられ、振り返るとそこには尾形さんがいた。

「尾形さん…」

先程のことを思い出して、私は思わず後ずさる。しかし、彼はそれを許さなかった。

「なぜ逃げる」

そう言いながら距離を詰められ、腕を掴まれた。彼はどこか目が座っており、まるで獲物を狙う獣のような目をしている。
本能的に恐怖を感じ、身をよじるが、ビクともしない。

「お、尾形さん……体調のほうはもう大丈夫なんですか？」
「…あぁ。まぁな」

そう言うやいなや、彼の手が伸びてきて私の唇をなぞるように触れられ、ビクリと体がゆれる。そのまま顎を持ち上げられ、彼との距離がぐっと縮まった。

「お、尾形さん…」
「A」

耳元で名前を呼ばれ、背筋がぞくりと震える。
息遣いや体温を間近に感じ、ますます混乱してしまう。
ゆっくりと尾形さんが近づいてくる。思わずその姿に、“彼”が重なって見え、ぎゅっと目を閉じた。

「あ、…“ ”。」

無意識に呟いた名前に、尾形さんの動きがピタリと止まった気配がした。恐る恐る目を開けると、無表情の彼が私を見下ろしている。

「……興が冷めた。少し涼んでくる」

そう告げたあと、尾形さんは立ち去って行った。
一人取り残された私はその場にしゃがみ込む。バクバクと高鳴っている鼓動を抑えようと深呼吸を繰り返すが、一向に収まる気がしなかった。