はしゃいだバカが1番偉い。連載短編集 season3 (ページ34)

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屈強な金獅子と虚弱な姉獅子5 ページ34

サ「いや、通らん

A女史に会いたくてな」

『何か御用？』

サ「用などない。ただ会いたくなった」

『そうなの・・・カッコいいこと言うのね』

サ「そうか」

満足げに横に腰掛けるサブノック。

サ「あっちから来るのか？」
『ええ』
サ「・・・では昨日よりだいぶ手前で限界が来たか？大事ないか？」

出発地点が同じなら、今座る地点は昨日出会った場所よりも手前で止まってしまった事になる。

『昨日みたいな大騒ぎ繰り返したら意味ないし
限界の前に休憩しながらの方が結果長く動けるのかなと思って。休憩という名の甘えの時間なの』

そう言ってAがサブノックを見ると

とても嬉しそうな顔をしていた。

『？』

サ「自分の至らぬ所を認めて改善する努力、尊敬する
己もそうして成長する楽しみを最近知ったのだ」

『サブノック君の成長は大きそうだけど…』

サ「大きいも小さいもないわ！

ヌシはカッコいい！」

『・・・ふふっ、そっかあ！

私カッコいい！』

Aが両拳を突き上げて声を上げて笑う。

サブノックはその様子を優しげな笑顔で見て
突き上げられた近い方の拳を握り寄せた。

彼の大きな手に拳はほぼすっぽり包まれる。
Aは自分の腕に有無を言わせない逞しさに男の強さを感じた。

『きゃっ
な、何でしょうか』

サ「こうしたくなった」

『・・・なるほど』

サ「ヌシは自身を情け無いと表現するが
知らぬ間に他人をヒーローにしている」

『どういうことかしら』

サ「ヌシは頼っているつもりでも
己らは人助けをしたカッコいい者になれるのだ」

『良い言い方してくれるのね』

サ「違う、ヌシでなくては成り立たんのだ。

頼られるばかりでは辟易する
単に出来ない者では助力するメリットがない

ヌシがその負けん気の強さで苦労して身につけた高等な魔術があるからこそ、あのA女史を今支えているという誇りにさせるのだ」

『･･･褒められ慣れてないから照れるわ

魔術、元々得意な訳じゃないってなんで分かったの？』

サ「エリザ女史の親類なのであろう？
血筋によるものではないと勝手に思った。勘だ！」

『あらぁ、鋭いのね

そうなのちょっと頑張ったの』

サ「この細い腕と手で頑張ったのだな」

握り込むその部分を見つめる彼の優しい目

Aは鼓動が大きくなる。

こんな時に小さい頃のエリザベッタとの会話を思い出した。

2人は愛らしいワンピースを着て、ふかふかのソファの上にいた。