体調を崩したら カルエゴ編3 ページ28
『苦いぃ』
「頑張ったな
この高熱では平熱にはならんだろうが
多少の効果はすぐ出る筈だ」
『風邪でもこれならちゅーできた』
「・・・だから飲んだのか」
『いつもより苦い』
いつもとはカルエゴとのキスのことだろう。
「やかましい」
どういう顔をしていいか分からずAを寝かせる。
「いいか、そこから1ミリも動くな」
『はぁい』
脱ぎ散らかした窓際の靴を整え
ローブをベッド脇の勉強机の椅子の背にかける。
それでも全身黒の装いだが腕まくりをして退室する。
桶にぬるま湯を張り、タオルを持って戻る。
「ゆっくりでいい、動けるか？
体を拭いて着替えろ。
こればっかりは手伝ってやれん。
が、そのままでは風邪が長引く」
Aは少し熱とは違う理由で頬を染めて頷く。
「私は食事を準備する。
着替えと使ったタオルはひとまず隠せよ」
『ん』
薬草の粥を作りながら本日何度目かのため息をつく。
「・・・疲れる」
カルエゴはここまで手のかかる彼女を想像したことがなかった。
大人びていたから自分と付き合えたのか、自分もそこに惹かれたのか。
もし現状が素で、普段無理しているのだとしたら。
「フッ」
微笑し思考は止まった。
もし本当は甘えただとしても、【付き合っていけないのでは】と言う迷いが微塵も起きなかったことに、思わず笑ってしまったのだ。
先程迄を落ち着いて思い起こし
溢れだす笑いを全身で堪える。
恐らく子供たちですら知らない面を見た。
(悪くない気分だ)
カルエゴは自覚以上に彼女自体に惹かれていたことに気づくと共に、これは恐らく尊い感情なのだろうと受け止めた。
「入るぞ、いいか」
『はい』
起き上がったAは薬が効き、さっぱりもした様で
少し明るい表情に見える。
カルエゴが勉強机に粥を置き水を手渡すと
口に含んで初めて渇きに気づいたのか一気に飲み干した。
その間に椅子に座り粥を小皿に取り分けている彼に
食べさせて欲しいAがソワソワと口を開く。
『先生、あーん「まずこれを食べろ。それからいくらでも聞いてやろう。口を開け」・・・ひゃい』
カルエゴは当然の様に小皿ごと一口掬った匙をAの口元に寄せた。
緊張を薙ぎ払いぱくっと食べると優しく爽やかな味が体に染みた。
『おいひい！先生料理上手ですね』
「ああ、ほら次だ」
ある程度食べるまで本当に話を聞いてくれない様だ。
無言の中、食器の音と時折水を飲む音が続く。
体調を崩したら カルエゴ編4 完→←体調を崩したら カルエゴ編2
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作者名：ジア | 作成日時：2022年6月30日 18時
