はしゃいだバカが1番偉い。連載短編集 season13

魔開師団の諸事情Ⅻ 迷わす大人たち3 ページ31

異物を取り除いた手の人差し指と中指をピッタリくっつけて軽く曲げ


その2本の爪側の中節骨の部分を


今なお目をきつく閉じるAの唇に押し当ててみた。





ふにっ




ほんの、1秒前後。




『・・・



・・・！！』




Aがゆっくり目を開いた。
照れるでも慌てるでもなく呆然とした顔で。


眼前には何ごともなく微笑むフルフルの顔だけ。





ア(なんだ今の？気持ち悪い)




アロケルがちょうど2人の元に到達した。

スピードを落とさずAだけ引きずって行こうと手を伸ばした瞬間


アロケルに気づいたAは驚いて
フルフルの支えから擦り抜け
逃げ去ってしまった。


緩く支えられていただけでいつでも抜け出せた様だ。



ア「ナ゛ニっ！」



つまりアロケルはフルフルと2人残された。



フ「ヤッホー！挨拶来てくれタノ？」



アロケルがまた全力で踵を返したが
首根っこを掴まれぐーんと引き寄せられた。



ア「あぁぁっ！」



フ「ねぇ」




立髪の当たる距離で真横に顔を寄せられる。
ジタバタしても無駄。



フ「Aちゃんさぁ」


ア「ハ？」




フ「多分今、ファーストキスを終えたと勘違いしてるヨ」




楽しげな明るい声。



ア(・・・さっきの気味の悪いやつカ！)



早く誤解を解かねばとジタバタを再開すると
口輪の様なマスクを包む様にガッと掴まれた。


ア「むぐっ！？」


パッ


急に離されアロケルが地面に落ちて低い声を上げる。


フ「次はアロケルともっと遊びに来るネ」



ア「来るナ！」



フルフルがすい〜っと浮かび上がって行った。



ア「チッ」



アロケルがAの走って行った方へと追いかけると、すぐにとぼとぼ歩く標的は見つかった。



ア「A！さっきのハ」



急に呼ばれビクッと振り返る。



ア「驚かせてスマン、怯えるのも無理もナイ
でもさっきのハ…」



『・・・？』



ア「ん？」



言葉が出ない。



言いたいことは確かにあるし
あとは声帯を伝うだけなのに声にならない。



ア(さっきのカ！)



マスクを鷲掴まれた瞬間を思い出した。
あの瞬間に何か魔術をかけられたらしい。



ア「その、んぐっ…Aは何もっ」



『アロケル君…気遣ってくれてありがとう』



ア「違ウ、そうじゃなく…」


『更に申し訳ないんだけど





ジャズ君に内緒に、して…くれる？』



ア「！？


内緒にするまでもない
何故ナラ…！」


ア(指が唇に当たっただけだから！)

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