乱れ乱れて散る桜 参

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胸の中から聞こえる規則的な息の音に、ゆっくり顔を覗き込むとAは泣き疲れて眠っていた。

起こさないように、乱れた服を直してベッドに寝かせる。

汚れのない綺麗な頬を撫でると、ついため息が出てしまう。



「天国に行っても、吉田松陽には会えない、なのに」



それが出来ることだと、君は信じているからこんなに美しいんだろう。

あの弟子達にこの美しい人が守りきれるだろうか。



「やはり、私と共に生きるべきだ……あなたは」



窓から桜の木を見ると、まだ散るには早いがあと二週間もすれば散るだろう。

彼女が正しい判断をすることを願う。



「また来ます。それが最後ですよ」

「…………いや……」



小さく聞こえた声に彼女を見ると目はギュッと閉じられていて、寝言のようだ。

病室を出ていく前にAの鼻にキスをして出ていく。

知らなくていい、本当の気持ちなんて永遠に。知らなくていい。






「……あなたに愛されるなんて、彼らが羨ましいですよ」






きっともうすぐ、この心はあなたに溺れて消える。

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