乱れ乱れて散る桜 参

106. ページ20

二人でいつも通り他愛のない話をしていると、廊下から走る足音が聞こえてきた。


「ここは病院だというのに……少し注意を」


よっこいしょ、と立ち上がった小太郎は扉の外に顔を出したと思ったら、すぐに引っ込めた。

ゆっくりと閉まる扉に背中を向けて、ベッドのそばまで戻ってきた。


「どうしたの？」

「真選組が居ました。ここで騒ぎを起こされて先生の体に障ると困るので今日のところは帰りますね」

「大丈夫よ。真選組の人たちだって人間だから……それに、きっとこんな病室には入ってこないって」

「でも…………じゃあ、真選組が来たらすぐに帰ります」


小太郎に帰られたら暇で暇で、その方が体に障る。

それに、忙しい真選組がこんなところに来る用事なんてないだろうし。


「……それは、なんの準備？」


小太郎はどこからか海賊のキャプテンが被りそうな帽子と眼帯を取り出して、海賊っぽい服も持っている。


「真選組が来たときに素早くキャプテンカツーラになり、逃げる準備です！」

「キャプテンカツーラ……」

「見ますか？きっと言われなければ俺だとは気付かないでしょう！」


見たいと言っていないのにキャプテンカツーラへと変身し始めた。

着替え終わった小太郎はワクワクした顔で



「先生！どうですか？分からないでしょう！」

「そ、そうね……一瞬分からなかったわ……」



そんな顔をされたら、バレバレだなんて言えないじゃない…………

107.→←105.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す