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ロビンはスパンダムの元に連れて行かれた。厳かに所長室まで向かう様はこれから殺されようとしている人間には見えなかった。ロビンは自分を諦めていた。最期に、自分を大事にしてくれた仲間に安全を残して行ける。そう思ったら自然と恐怖はなかった。

ろくでもないこの手のひらに残ったものを捨てず、裏切らずにこの世を去れるのならば、上々の幕引きだ。

心残りが無いと言えば嘘になるが、どんなに幸せで恵まれ、夢を叶えた者でも、人間死ぬ時は誰だって多少の心残りはあるものだ。何の心残りも無しにまっさらな状態で死ぬなんて無いのだろう。


そんなロビンの心残りは己の夢であった。そして、もう一つ。Aの事もあった。


たった14歳の少女がこの世の絶望も恨みも混ざった黒を背負っていた。比較的に一味と距離を取る少女の中でも自分は少女に近い位置にいた、という自覚がある。最も、Aが一番警戒していたのはロビンではあるが少女もまた、同族嫌悪と同時に自分のように闇を生きていたロビンに仲間意識の様なものを無意識に感じていた事だろう。



__Aなら大丈夫。




ルフィもいる。ナミもいる。あの船には世話焼きが多いから、きっと大丈夫。第一、Aは他人に興味を示さず、情を感じず、いつでも切り捨てられるように生きている。命の天秤にかけられた時、何の躊躇いもなく自分の命を選べるように人に情は移さない。だから、ロビンがいなくなったところで少女が嘆き、落ち込む事はない。

そう思うと寂しくも思う。


それでもロビンの中にあったのは安心だった。脆く弱く、簡単に崩れ落ちてしまう安心が崩れ去ったのは、スパンダムの演説を聞いている時、耳の中を通っていくそれらが止まり、所長室の扉が開き、無造作に地面に落とされたそれを見た時だった。



「どういう事!?何故この子が……ッ!!」



ボロボロな姿のAを見てロビンは顔色を変えた。咄嗟に駆け寄ろうとするも、勝手に動くなと押さえ付けられた。

ロビンがここへ来たのは麦わらの一味に矛先が向かない為である。Aはクルーとして認めていないが、少女もあの船に乗る一人。Aにもロビンの要求した安心を与えなければならない一人なのだ。その少女が何故、目の前でボロボロになっているのか。



床に落とされた衝撃と、周りの音にAは薄らとその目を開けた。両手には枷が付いている事を確認して、続いてロビンと黒服の男女を見て顔を顰めた。

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チョコレート(プロフ) - きゃーぽんさん» ありがとうございます!面白いと思っていただけるよう、これからも頑張っていきます! (2021年10月18日 1時) (レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - 面白くて一気に読みました!これかも頑張ってください! (2021年10月18日 1時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 水無月碧音さん» ありがとうございます!!まだまだ未熟者ですが、楽しんでいただけているようで私も嬉しいです! (2021年10月16日 4時) (レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
水無月碧音(プロフ) - とっても面白いです!繊細な文章で、読んでいてとてもワクワクします!応援してます、頑張ってください!! (2021年10月15日 21時) (レス) @page17 id: 8595db9a5d (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 星猫さん» んー、結構色んなアニメ知ってると思います! (2021年10月14日 16時) (レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:チョコレート | 作成日時:2021年10月12日 19時

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