＊８７話 ページ8
巴衛に着せてもらった着物は、恐ろしくも美しかった。
「……ずいぶん様になった…」
それって褒めてます??
「…ほ、本当!?見たい!!」
たとえ褒めてくれていなくても嬉しいから構わないけど。
「皆にも見せてくる」
瑞希たちはどう思うだろうか。
そう思った私は、瑞希たちのところを向かおうとしたのだが。
「えﾞ何?」
何故に引っ張った??
「…いや糸がほどけていた」
なんだ、糸がほどけていただけなのか。
「巴衛、ありがとうね」
衣装を汚さないように走って私は瑞希たちのところに向かった。
＊
「聖華ちゃん どうしたのその格好!?」
三人は呑気に団子を食べている。
はたして私の分はあるのだろうか!?
「神楽の衣装でございますな」
「巴衛にね着せてもらったの。私には神楽が向いてるんじゃないかって!」
巴衛がそう言ってくれただけでも嬉しかった。
「うおっ!!??」
もう気にしない。
女の子らしくなくても気にしない。
「ぐふっ」
ただ問題は、毎回転ける理由だ。
私はそこまでﾄﾞｼﾞではなかったはずだ。
「……」
瑞希たちから無言の空気がやってきた。
「祭をするというのにそれで踊る気か?」
やれやれ、と巴衛はいうが今時の日本人は洋服派なんだぞ。
「裾踏んだだけだし…」
慣れない和服はきついな。
これは訓練かしら?
「そりゃ私は神様らしいこと何もできないけど…人が出来る範囲なら努力次第でなんとか…」
なるのだろうか。
若干、不安な気持ちに襲われた。
「…お前が気付かないだけだ」
んんん??気付かない??
「
えﾞ私??
「無神の社は瘴気の溜まり場。いくら俺でも祓うことはできん」
巴衛にもできないこととかあるんだね。
「お前が初めて来た時、
ええ、そりゃ覚えてますよ。
あの時の巴衛は怖かった。
「随分きれいになったと思わないか?掃除のし甲斐もあるというものだ」
どんな言葉より、その言葉が一番嬉しかった。
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