＊１０９話 ページ39
翌日も香夜子は学校に来なかった。
「また式神集中育成してんのかな…」
「ｷｨｷｨ」
肩に乗っているマモル君が私を止めている。
「…わかってるよマモル君」
わかってるからこそ、私は香夜子の家に行くのだ。
「ちょっと様子見に行くだけだから」
香夜子の卵はたしかに少し変な感じだった。
――ﾋﾟﾝﾎﾟﾝﾋﾟﾝﾎﾟﾝ
私は香夜子の家のチャイムを鳴らす。
が、香夜子は一方に現れない。
―――ｶﾞﾁｬﾘ
「開いてる」
鍵を閉めていないとは、なんたる無用心なのだろうか。
「とは言ってられないや。香夜子、入るよー」
無断で入るのは失礼かもしれないが、この場合は許してほしい。
「香夜子……?」
部屋に進んでいると、倒れている香夜子の姿を見つけた。
「香夜子!!」
香夜子の近くにあるのは大きく成長している卵だった。
「…何これ……これが…香夜子の卵…?」
香夜子は倒れるまで式神の卵に気を与えていたというのだろうか。
「…霧…」
香夜子が呟く。
「霧仁さま……」
香夜子の手が私の頬に触れる。
「…うちに…会いに来てくれはったんですか…?…うれしい…」
(香夜子の好きな人は霧仁って名前なんだ…)
「…うち頑張ります…頑張って…霧仁さまを出雲に……」
香夜子は『霧仁』という人物のために頑張っている。
こんなに倒れるまで、香夜子は頑張っている。
「…香夜子……起きなさい。私は霧仁って人じゃないのよ」
「…土地神…」
意識がはっきりしてきたのか香夜子はｶﾞﾊﾞｯと起きた。
「なんでここにおるねん」
「玄関が開いてたから」
無断で入りました、と私は香夜子に告げる。
「霧仁さんっていうんだ…アンタの好きな人…」
「…うちの仕事は、人間を神通力で救うこと」
香夜子がいきなり語り出した。
「…でも、相談に来る人間の話を聞きながらいつも思ってた」
香夜子はいつも考えていたのだ。
自分を助けてくれる人物の存在を。
香夜子はずっと、求めていたんだ。
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