＊１０８話 ページ38
―――ﾎﾟﾝｯ
廊下を歩いていると、そんな効果音が聞こえた。
「せいかっ」
マモル君の言葉と共に背中に感じる重み。
「わっっ」
それに私は驚きそんな声を出してしまった。
「どうしたの?マモル君」
「…あの女の卵、もう近寄らない方がいい」
香夜子の卵に近寄る事に反対するマモル君。
「理由とかあるの?あるなら教えて、マモル君」
「あの卵には……、悪いもんがつまってる」
マモル君は、香夜子の卵に悪いものが詰まっていると私に告げている。
「…え?」
――ﾎﾞﾝｯ
どういう意味なのか聞こうとする前にマモル君は元の姿に戻ってしまった。
「巴衛」
「…た、楽しかったか?カンランシャ」
照れ顔の巴衛は、なんだか可愛らしく思える。
「乗りたいなら連れてってあげるよ」
「別に乗りたくない」
わざわざ迎えに来てくれた巴衛の優しさが嬉しくて愛しく感じる。
“別にいいやん。好きな男が妖でも――――”
ふと、香夜子の言葉を思い出した。
もしかして、香夜子にもそういうひとがいるのだろうか。
香夜子にも好きな人がいるのだろうか。
◆
『誰かを好きになるのに理由なんてない。
自然と好きになるのが『恋』というもの。
たとえ好きになった相手が、人ではなくても。
好きになったのなら、その気持ちを突き通せばいい。』
そう教えてくれたのは誰だったかな。
思い出せないけれど、その言葉だけは覚えている。
でもその言葉を信じていても、この先『幸福』ばかりじゃない。
私はこのまま『
私は、『あの子』じゃない事を理解している。
理解しているはずなのに。
『巴衛』が愛したのは『あの子』であって私ではない。
それを理解して行動するべきなんだ。
私は『あの子』じゃないのだから―――。
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