＊１０６話 ページ27
「相方やる気になったってことで試験内容を発表してもいいかしら」
「乙比古ちﾞゃんﾞ……ｯ」
なんで今現れたの?
「何泣いてんのよ。ほら、これで吹きなさい」
ハンカチを渡されても困るのに…!
「試験課題は超カンタン」
試験課題……?
「式神の育成よ」
式神を育成すればいいわけ?
「これは式神の卵。所有者の気を養分にしてすくすく育つ」
あ、大分涙が止まってきた。
「七日後 無事に式神が孵るまで各々肌身離さず持ち歩きなさい」
お風呂とかは?その時も?まじで?
「アタシ好みの美しい式神に育てた方を勝ちとするわ」
美しいを強調してるけど、乙比古の感じる美しいって何?
「乙比古、お風呂の時とかどうするべき?一緒に入ればいいの?」
「そりゃもちろんよ」
「もしオスだったら恥ずかしくない?」
「バカね、あんた。それがいいんじゃないの!」
なんで興奮している!?
まあいいや。
「わかった。私、頑張る」
「頑張りなさい」
乙比古はそう告げると帰って行った。
＊
自宅に戻って来ました。
「出雲には行くなと言ったはずだ!!」
「行くったら行くの!もう決めたのっ 絶対引き下がらないんだから!!」
絶対に勝って謝らせてやる。
「そんなもの返してこい!!」
「嫌!!なんであの子の肩持つの!?」
きれいな人にキスされたから!?
嬉しかったから!?
「うう…ｯ!きれいな人にキスされて内心デレてたんでしょ…ｯ!ｽﾞﾋﾞｯ…」
「なんの話だ。いいから卵を渡せ!!」
「嫌!全然に嫌!」
渡さない。
絶対に渡さないもん。
――ﾊﾞﾝｯ
「聖華ちゃん」
「…ｯ 瑞希…ｯ」
瑞希を味方にできるだろうか。
「聞いて聞いてっ 今日、参拝者が二人来て……」
―――ﾍﾟｷｯ
「…ｯ!瑞希の阿呆――!!」
瑞希が卵を割った!?
瑞希までもが敵なのか!?
「まあまあ聖華。可愛らしい瑞希のした事ではないか。ここは大目にみてやれ」
「阿呆!阿呆!阿呆阿呆阿呆阿呆阿呆!」
死んじゃったらどうしよ!?
――ﾊﾟﾘﾝ…ﾊﾟﾘﾝ…
何かが砕ける声が聞こえる。
「キィ」
そんな鳴き声と共に現れたのは子ザルだった。
「生きてて良かった…」
本当に生きてて良かった。
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