＊９９話 ページ20
「我らが祭の為に設えたものじゃ。生きのよい若い者達も連れてきた」
その声は、皇女のものであった。
巴衛の妖術かと思ってたけど皇女だったんだ。
「わらわもたくさん着物を持って参ったぞ」
ちゃんと人間っぽい姿までさせている…!!
「皇女!どうしたのその服…!すごくかわいい!!」
「まことか」
お嫁にしちゃいたいくらい可愛い。
これならきっと小太郎君も更に惚れてくれるだろう。
「オラ!淡水魚ども!!」
…朝から騒がしいなぁ龍王は。
「俺様抜きで勝手に始めてんじゃねーぞ!!この龍王様が来たからには祭のトリは俺様のもんだ――――!!」
完璧な近所迷惑である。
にしても正体くらい隠そうぜ?
「どっから見ても一匹残らず妖怪ではないか!!少しは正体を偽って来い!!」
巴衛の意見がもっともである。
「なんだ狐野郎」
龍王は文句を言っているがｽﾙｰの方向で。
「乳臭ぇ!哺乳類の臭いがすんぞ!!」
つまり龍王達は卵から産まれるのだな。
「哺乳類とかいう問題じゃないんじゃ…」
「土地神様」
小さい。
なんだこの小さい妖怪は。
「は、はいっ」
「お初にお目にかかります。我らは南の地に住む妖の長」
「土地神様が神楽を舞われると聞き馳せ参じました」
わざわざ南の地から……?
「本日は どうぞよろしくお願いいたします」
「土地神様の有難い舞を拝めば我らも精気が湧きまする。ありがたやありがたや」
またﾌﾟﾚｯｼｬｰだ。
ﾌﾟﾚｯｼｬｰには弱いのだけど。
「えﾞあ…でも私まだそんな…」
そんな実力はない。
「どうした?聖華」
「な…なんでもないよ!」
大丈夫。
いっぱい練習したから大丈夫。
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