＊９８話 ページ19
「見ろ聖華」
巴衛にそう言われて顔を上げれば目の前はとてもきれいだった。
「祭が近づくと昔はこうやって社までの道を明かりが照らしていたものだ」
「おお…!」
「人間が道に迷わぬように祭の日まで灯しておけば皆 迷わず祭の席へ訪れよう」
その明かりはとてもきれいなもので心がﾎﾟｶﾎﾟｶする。
「わあ、きれい」
「お祭?」
町の人達もそれに気付いたみたいだ。
「…これ狐火…?」
「そうだ。本来なら氏子の家々が提灯を持ちよっていたのだが…」
今は常識なんてどうだって構わない。
「安心したか?」
とても安心する。
「…ん」
嬉しい気持ちになる。
「ありがとう巴衛」
嬉しくて思わず抱きついた。
後悔はしていない。
「良かったな聖華。イケそうじゃん?」
あ、鞍馬のこと忘れてた。
「じゃあな」
「またねっ」
石段を降りていく鞍馬の姿は、少しだけ寂しそうだった。
＊
期待と不安の一週間が瞬く間に過ぎいよいよ本日祭本番。
社は朝から大騒ぎです。
「えﾞこれが神楽の衣装――!?男物の着物じゃん。前に着たのと違うよ?」
なんで男物の着物?
ミカゲさんが
「以前のは巫女の衣装だ。それが正式な神の衣装。ミカゲは男神なのだから仕方あるまい」
正解だったのは構わないの。
でもね…
「そのお面とカツラは何かな?」
なんかダサくね?
「聖華さま」
「なんとか神々しい御姿……」
「ミカゲ様がお帰りになったようです」
ごめん、全然嬉しくないかな。
この日の為に準備はしてきたけどいざ当日になると―――
強烈な吐き気に襲われる。
「ああ ヤバイ。本格的に緊張してきた…!!」
腹痛にまで襲われる……!!
「聖華」
「ひゃい!?」
「いかに未熟だろうと今日ここに来る連中にとってお前は土地神だ」
未熟なのはわかってるけど真っ正面から言われるのは悲しい。
「失望させるな」
「…ん」
ﾌﾟﾚｯｼｬｰは欲しくなかった。
でもまあ、毎日八時間ぴっちり神楽の練習してきたもんね!!
私の方は完璧…!!
あとは…
「聖華ちゃん、外で皆が待ってるよ」
祭の設営―――
「…すごい。これいつの間に…?」
石畳まで敷いてある…。
妖術でも使いました?
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