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▼アイスコーヒー ページ29
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「……ちょっと、ずるかったかな」
ソファの上で
すやすやと眠る大貴くんの顔を見ながら呟く。
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俺の家に連れて行っても良かったのだけど、
それは申し訳ないとAちゃんが譲らなかった。
だから、伊野尾ちゃんの好意に甘え
大貴くんを休ませていた。
熱は38度を超え
顔を真っ赤にする彼は
保育園から今まで、1度も起きていない。
まだ眠れているから良かった。
汗で濡れた前髪を掬うと、
おでこに貼った冷えピタが現れる。
「別にいいんじゃない？
恋は駆け引きが大切って言うでしょ？」
「……」
俺の小さな呟きは
しっかりとこのカフェのオーナーに
届いていたようだ。
これは駆け引きっていうのか？
彼の言葉に返すのは苦笑い。
「ちょっと強引だし、卑怯だよな俺」
でも、やっと掴んだチャンス。
必死に掴まないわけがなかった。
恋は盲目。まさにそれだ。
でも冷静になると、卑怯な気がして
真っ向勝負で生きてきた俺からしたら
ちょっと居心地が悪いのよ。
カランカラン。
伊野尾ちゃんが淹れてくれたアイスコーヒーは
「……にがっ」
ミルクもガムシロップもはいっていなくて
俺の心を表すかのように、ほろ苦かった。
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作者名：めもり | 作成日時：2021年11月21日 21時
