最終話「時代は巡る」 ページ48
意識が戻った時は畳の上。
側には冷えた三ツ矢サイダーがあるし、蝉の鳴き声も聞こえてくる。
ぼんやり霞んだ記憶を辿っても、何か長い夢を見ていた気がするだけで思い出せない。
「夢…かな……」
そうだ。きっとあれは夢なんだ。
暦は大正13年。西暦1914年。
空を見上げると、いつかどこかで見たような、とても綺麗な青空だ。
でもこれは夢じゃないかもしれない。
「あれ…?」
気付くとわたしの手にあったもの。
それは泣きたいほどになつかしさを感じる、一枚の古ぼけたトランプカード…。
「Aさん、一大事ですよ。」
ずっと前にもあった気がするのはなぜだろう?前にも菊に平穏な時間を邪魔されたと思う。
「どうしたの?」
わたしも決まった言葉を返す。
「ヨーロッパのほうで大きな事件があったそうです。」
続けて菊は、こう言ったんだ。
「大きな“戦”になりますよ。」
たった今聞いたことなのに、わたしの心の奥底で何かが動く。衝動的なものじゃなくて、これはきっと、もっと必然的に生まれた何かの使命感。
「菊。」
「はい?」
「その戦、きっとわたしが止めてみせる!」
いま起こった出来事なのに、どういうわけか『今度こそは!』と思わずにはいられない。何がわたしをそうさせているのかは、やっぱりわからなかった。
でも。
「そうですね…私もAさんと同じことを考えていました。」
菊も同じ思いを抱えている。
「戦争は憎しみを生むだけです。私も争うのは疲れたんですよ。まるで遠いところから戻ってきたみたいに…。」
この時、わたしはたしかに感じたんだ。
“時代は巡る”って…。
〜完〜
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スノーデイ(プロフ) - 私は日領こと露領(靴下)こと世界領((←さん» ありがとうございます。今は“まだ”ですがそのうちどうなるかと思うと怖いですよね。戦争を起こさないためにはどうしたら良いのかを考える切っ掛けになったのなら嬉しいです。コメントありがとうございました。 (2016年2月22日 21時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
私は日領こと露領(靴下)こと世界領((← - とても感動しました。戦争という事についてとても深く考えさせられる、とても素晴らしい作品でした。今は “ まだ ” 起きていない第三次世界対戦や第四次世界対戦、第五次世界対戦など、戦争について改めて一から考える切っ掛けとなりました。有り難うございました。 (2016年2月22日 20時) (レス) id: d4b1972073 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - にゃん。さん» 閲覧ありがとうございます。でも全然素晴らしくなんかないですよ。考察とかけっこう曖昧なところがあるので。それでもこうして丁寧なコメントを下さって本当に嬉しいです。これからも頑張ります。 (2015年12月17日 19時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん。 - 小説、全て読ませていただきました。戦争という難しい、そして悲しいテーマでこれほどまで素晴らしい小説を書かれたことに非常に感動しました。それはもう思わず涙を流してしまうほどには。素敵な作品を本当にありがとうございました。これからも楽しみに待っています (2015年12月13日 14時) (レス) id: 3296dfbe0f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - あかいそらさん» コメントありがとうございます!これからも感動してもらえるような作品が書けるように頑張ります! (2015年5月9日 2時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スノーデイ | 作成日時:2015年3月26日 23時