第1話「世界の裁判」 ページ3
雲ひとつない晴天の下。
春の匂いを運ぶ風に包まれ、わたしは洗濯物を乾かす。
「せっかくの穏やかな日なのに、それほど根をつめなくても良いでしょう。」
菊はわたしのことを労ってくれるけど、そうゆっくりしてもいられない。
「わたしにとってはちっとも穏やかじゃないけどね。ついこの間あったことを忘れたの?」
実を言うと、このところ国同士の陰湿な足の引っ張り合いが平気でまかり通っている。例題を挙げればキリがない。
わたしと菊の身にあったことといえば、イヴァンがわたしたちの領土の一部、北海道を乗っ取ろうとしたことだろうか。イヴァンはずっと以前から北海道を我が物にしようとしていたらしい。
そこで先日、国と国との争いを仲裁する国際司法裁判所のお世話になってきたわけだ。結局イヴァンは裁判に応じなかったけど。
国際司法裁判所は、何度も起きた悲惨な世界大戦の経験から『国同士のもめ事は裁判で解決しよう』という願いのもとに設立された。
だから武力に訴えず、裁判で決着をしようというんだけど、わたしたちは訴えようとした相手に裁判を拒否されるんだから困りもの。
でもわたしと菊だって過去にオーストラリアさんから訴えられたことがある。捕鯨についてお互いの理解が足りなかったから…。
それに詳しく言うと、国連憲章第94条に『国際司法裁判所の判決に従わない場合、国連安全保障理事会(安保理)が適切な処置を取ることができる』とある。
安保理が動くことで、国連平和維持軍によって紛争を強制的にやめさせたり、制裁を加えたりすることができるというものだ。
安保理は国連の最高決議機関で15の理事国でやっていってるけど、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア(第四次世界大戦以前は中国もいた)の4つの常任理事国のうち、1ヵ国でも反対すれば議決できない。いわゆる拒否権ってヤツだ。
だから、どこまで国際司法裁判所の判決がきちんと執行されるのか疑問が残る。
「こんなに良い日なのに…。」
お茶を片手に、菊は明るい青空を見上げた。
聞こえるのは鳥のさえずりだけ。
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スノーデイ(プロフ) - 私は日領こと露領(靴下)こと世界領((←さん» ありがとうございます。今は“まだ”ですがそのうちどうなるかと思うと怖いですよね。戦争を起こさないためにはどうしたら良いのかを考える切っ掛けになったのなら嬉しいです。コメントありがとうございました。 (2016年2月22日 21時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
私は日領こと露領(靴下)こと世界領((← - とても感動しました。戦争という事についてとても深く考えさせられる、とても素晴らしい作品でした。今は “ まだ ” 起きていない第三次世界対戦や第四次世界対戦、第五次世界対戦など、戦争について改めて一から考える切っ掛けとなりました。有り難うございました。 (2016年2月22日 20時) (レス) id: d4b1972073 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - にゃん。さん» 閲覧ありがとうございます。でも全然素晴らしくなんかないですよ。考察とかけっこう曖昧なところがあるので。それでもこうして丁寧なコメントを下さって本当に嬉しいです。これからも頑張ります。 (2015年12月17日 19時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん。 - 小説、全て読ませていただきました。戦争という難しい、そして悲しいテーマでこれほどまで素晴らしい小説を書かれたことに非常に感動しました。それはもう思わず涙を流してしまうほどには。素敵な作品を本当にありがとうございました。これからも楽しみに待っています (2015年12月13日 14時) (レス) id: 3296dfbe0f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - あかいそらさん» コメントありがとうございます!これからも感動してもらえるような作品が書けるように頑張ります! (2015年5月9日 2時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スノーデイ | 作成日時:2015年3月26日 23時