先生と手紙1 ページ3
｢何で先生に冷たくするアルか！先生なんにも悪いことしてないネ！確かに最初は不審者だったけど、いい奴アル！｣
｢俺の前で二度とあの女の話をするんじゃねェ、先生なんて呼ぶな｣
｢せめて理由を教えてください！｣
｢お前らが知る必要はねェ｣
何度問いつめても銀さんはとうとう口を割らなかった。
僕はずっとモヤモヤした気持ちを抱えたまま日々を過ごした。
家に隠してある先生に貰った本を読みながら、ずっと先生のことを考えていた。
｢新ちゃん、手紙が来てるわよ。でもこれ誰からなのかしら。綺麗な字だけれど、名前がないわ｣
僕宛ての手紙だった。
その字を見た時、僕ははっとした。万事屋で、先生が神楽ちゃんに字を教える時に見たそれとそっくりだった。
僕は姉上から手紙を引ったくった。尋常ならぬ様子に、姉上も何かを察したようだった。
｢新ちゃん、お知り合いの人なの？｣
｢はい｣
｢もしかして、たまに来てた先生って人？｣
先生は剣術にも長けた人だった。時折僕の家を訪れては僕に剣術の指南をしてくれていた。
銀さんと鉢合わせしそうになった時は、裏口から逃げるように帰っていた。
｢そうかもしれない、姉上、僕……｣
｢1人でゆっくり読みなさい｣
姉上は何も聞かずに僕を1人にしてくれた。
手紙は丁寧に封をしてあって、几帳面な先生の性格が出ていた。消印はかぶき町から少し離れた田舎のものだった。
僕はずきずきと変に痛む胸を押さえ、手紙を開いた。先生の見なれた筆跡が懐かしかった。
｢新八くん。
無記名の怪しい手紙を開封してくれてありがとう。君が私の筆跡を覚えてくれていたらいいと願いながら封をしました。
万事屋に手紙を送ると、銀時さんが先に開けてしまうと思い、新八くんに送ることにしました。神楽ちゃんにも、ぜひ読ませてあげてください。
まずお詫びをさせてください。私が皆さんの平穏の邪魔をしてしまったことを、私は謝りたいのです。君は優しいから、そんなことはないと言ってくれるのでしょう。しかし銀時さんの態度が全てを物語っていました。｣
先生が銀さんの名前を口にしたことはなかった。2人の間に会話らしき会話などなかった。一方的に銀さんが棘のある言葉を吐き捨てるだけだった。
だから先生が銀時さんと記したことに少し驚いた。
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作者名：風寧 | 作成日時：2019年10月13日 2時
