先生とかぶき町2 ページ16
戦わなければ、倒さなければ終われないのは、僕達も、銀さんも、先生も同じだった。
襲ってくる奈落を蹴散らし、先生に助太刀しようと近づいたが、なんと虚は連中に不完全ながら不死の力を与えており、一筋縄ではいかなかった。
更に悪いことに、奈落三羽の最後の一羽、棺が現れた。信女さんは咄嗟に警戒したけれど、極限の集中状態だった銀さんは棺をほんの一瞬で倒したように見えた。
｢俺の前にいんのはただの悪党だ
お前の前にいんのはただの万事屋だァァァ！｣
銀さんの一太刀が虚に届くかと思われたが、棺も不死者で、何事も無かったかのように起き上がってきた。
斬っても斬っても終わりが見えなかった。その内解放軍の船が見えた。
閃光が迸り、周りが何も見えなくなった。時間差で熱風と衝撃波が襲ってきた。そこから先は、よく覚えていない。
｢新八くん｣
先生の声がした。メガネが割れたせいで、先生の顔が歪んで見えた。周りの景色も、歪んで見えた。
｢あ……先生、怪我はありませんか｣
｢君は毎回聞いてくれますね……皮肉ながら全て治りました｣
｢……いけない、先生もアルタナの力があること、すぐに忘れて心配しちゃうんです｣
｢嬉しいですよ。ですが今はゆっくり話している時間はありません｣
神楽ちゃんと定春は無事だった。
銀さんが、ぐったりした信女さんを抱えて来た。
｢A、なんで突然いなくなった｣
｢すみません。地球では私の虚探索機が精密に作動しないので｣
｢なんだそりゃ……？｣
｢洛陽には私達のエネルギー源たる地球のアルタナはありません。ですから私はあの場所にとって異物である、虚の体内にあるアルタナを感知出来ました。
しかしここは地球。虚のアルタナを感じ取ろうにも、地表に湧き出るアルタナが邪魔をして上手く測れないのです｣
だから虚が現れそうなそこでずっと待っていたのだと言った。
｢ですがアルタナを感知出来ないのはあちらも同じ。これからは気兼ねなく君達と一緒に戦えます｣
動けない信女さんを定春の背に載せ、人気のない江戸の街を走った。
空に大きな影が差した。続けざまに辺りの建物一体に爆撃が放たれた。地上に残っていた解放軍が、僕らを狙っているのが分かった。
銀さんが信女さんを抱きかかえて逃げたが、相手は戦車で、勝ち目などなかった。僕らの心を、唐突に不安と絶望が襲った。
｢まだ終わってねェェェ！｣
一方の部隊から、聞きなれた声がした。
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作者名：風寧 | 作成日時：2019年10月13日 2時
